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タイヤチェーンは種類で結果が逆転する — 坂を上れたのは金属、曲がって止まれたのは非金属

公開: 2026-08-19 / 更新: 2026-08-19

カーグッズのイメージイラスト

タイヤチェーンは、雪の予報が出てから慌てて買いに走る道具の代表格です。ところが公表されている試験データを並べていくと、持っているかどうかの手前に、どれを買ったか・どこに着けたかという分かれ道があることが見えてきます。しかも、上り坂で強かった種類と、曲がって止まれた種類は違いました。

この記事では、国土交通省が公開しているチェーン規制の説明と、JAF(日本自動車連盟)が北海道の同じ試験場で行った5つの実測から、チェーンを買う前に決めておきたいことを整理します。

先に結論

  • 大雪時のチェーン規制では、スタッドレスタイヤを着けていても、4WDであっても、チェーンのない車は通れない(国土交通省)
  • 国土交通省がその説明で参考リンクに挙げているJAFの実測では、凍結路(勾配9%)はスタッドレスタイヤでも上れず、そこにチェーンを足して初めて上れた
  • ノーマルタイヤに3種類のチェーンを着けた登坂テストでは、勾配15%は3種類とも上れたが、勾配20%を上りきれたのは金属チェーン(亀甲型)だけだった
  • ところが翌日の旋回テストでは評価が逆転し、時速30km/hで安定して曲がれたのは非金属チェーンだけ。亀甲型は後輪が滑ってスピンし、急制動でも非金属が最も短い距離で止まった
  • 同じチェーンでも駆動輪でない側に着けると坂を上れず、前輪駆動車では平坦路の制動距離が約7m延びた。国土交通省も「駆動輪にタイヤチェーンを着けることが基本です。」としている

チェーン規制 — スタッドレスでも通れない区間がある

冬用タイヤ規制はスタッドレスタイヤなどで通行できますが、それとは別にチェーン規制があります。国土交通省はチェーン規制について、「大雪特別警報や大雪に対する緊急発表が行われるような異例の降雪があるときに行います。」と説明しています。ふだんの雪で発動するものではなく、本来なら通行止めになるような場面が対象です。

目的は通行止めの時間を短くすることだと同省は書いています。全面的に止める代わりに、チェーンを着けた車だけ通す。だから規制の中身は、装備の有無で線を引くものになります。

実施される場所についても条件が示されています。「急な上り下りがある峠などで、過去に雪による立ち往生や通行止めが起こった場所の中で、タイヤチェーンを着脱できる場所や通行止めが解除されるまで待機できる場所がある区間で実施します。」。峠であることに加えて、着脱する場所と待つ場所があることまで条件に入っているのが特徴です。

そして、多くの人が意外に感じるのがここです。同省は「スタッドレスタイヤを着けている自動車であっても、大雪時には立ち往生することがあります。」と書いたうえで、こう続けています。

今回のチェーン規制では、スタッドレスタイヤを着けていても、タイヤチェーンをしていない自動車はチェーン規制中に通ることはできません。

4WDについても同様で、同省は「4WD車両は重量が大きいため、下り坂で急ブレーキをかけた時に、止まるまでの距離が長くなることから、チェーン規制中はタイヤチェーンを着けていないと通ることはできません。」としています。スタッドレスも4WDも、規制の前では例外になりません。

同省のページには、制度が始まった2018年12月時点の対象区間として、直轄国道6区間(月山道路、山中湖・須走、大須戸〜上大鳥、石川県境〜坂井市、赤名峠、鳥坂峠)と高速道路7区間(上信越道、中央道の2区間、北陸道の2区間、米子道、浜田道)の一覧が掲載されています。いずれも峠越えや県境の区間です。区間は見直されることがあるため、出かける前の最新情報は道路管理者の発表で確認してください。

なぜスタッドレスでも通さないのか — 国が参考に挙げた実測

この説明の作られ方が興味深いところです。国土交通省のページは、「スタッドレスタイヤでも規制対象なの?」「4WD車両も規制対象なの?」という問いへの答えに、それぞれJAFユーザーテストへの参考リンクを添えています。行政が装備で線を引く理由を、第三者機関が実車で測った結果で裏づけている形です。

スタッドレスの問いにリンクされているのが、JAFユーザーテスト「雪道での登坂テスト」(2017年2月12日・交通科学総合研究所〈北海道士別市〉)です。前輪駆動のコンパクトカーで、6種類のタイヤ(すべて新品)が全長50mの坂を上れるかを、それぞれ3回試しています。結果はこうでした。

  • 圧雪路・勾配12% — 平坦路から発進した場合、上れなかったのはノーマルタイヤだけ。ただし坂の途中から発進すると、上れたのはスタッドレスタイヤ・チェーン・オートソックで、ノーマルタイヤとオールシーズンタイヤ、スプレーチェーンは上れなかった
  • 圧雪路・勾配20% — 平坦路からの発進で上れたのはスタッドレスタイヤのみ。しかもそのスタッドレスタイヤでも、坂の途中から発進した場合は上れなかった
  • 氷盤路(アイスバーン)・勾配9%スタッドレスタイヤでは上れず、スタッドレスタイヤにチェーンを装着すると上ることができた

最後の1行が、規制の設計とまっすぐつながっています。JAF自身のまとめも「スタッドレスタイヤは、他のタイヤと比べて登坂性能は高いものの、雪や雨が降ったあとの凍結路面などではその限りではないので、注意が必要である。」と述べています。スタッドレスタイヤの限界の先にチェーンがある — だから異例の降雪時の峠では、スタッドレスであっても通さない。同テストのもう一つのまとめは「ノーマルタイヤは、雪道の勾配12%の坂道でさえ上れないため、雪道ではスタッドレスタイヤやチェーンを必ず装着する。」でした。

※以下で紹介する3種類のチェーンの比較テストは、この参考リンクとは別に、同じJAFが行ったものです。

種類で結果が割れた① 坂を上る

JAFユーザーテスト「あなたのチェーンは急坂を上れますか?」は、2019年2月19日に同じ交通科学総合研究所で行われました。前輪駆動のコンパクトカーの新品のノーマルタイヤに、種類の違うチェーンを装着し、圧雪された全長50mの登坂路(勾配15%・20%)を上りきれるかを、それぞれ3回試しています。

チェーンの種類勾配15%勾配20%
金属チェーン(亀甲型)上りきれた上りきれた(ただしタイヤが空転し、車の挙動も乱れた)
金属チェーン(はしご型)上りきれた斜面に入るとすぐ滑り出し、上りきれず
非金属チェーン(ウレタン系)上りきれた斜面に入るとすぐ滑り出し、上りきれず

勾配15%では3種類とも上りきれています。つまり差が出たのは急な方の坂だけで、非金属チェーンがまったく使えないという話ではありません。JAF自身も「結果は一例であり雪道や車の駆動方式、タイヤの種類などで結果が変わることがある。」と注記しています。それでも、勾配20%で3種類のうち2種類が上れなかったという事実は、買い物の判断を変えます。しかも唯一上りきれた亀甲型でも、タイヤは空転し挙動は乱れました。上れた=余裕があった、ではありません。

※このテストの条件は、ノーマルタイヤにチェーンを装着したものです。スタッドレスタイヤにチェーンを装着した場合の結果ではありません。

種類で結果が割れた② 曲がる・止まる — 評価が逆転する

ここからがこの記事の本題です。JAFはその翌日(2019年2月20日)、同じ試験場で、同じ前輪駆動のコンパクトカーに同じ3種類のチェーンを装着し、旋回と急制動を測っています。「雪道での旋回と急制動テスト チェーンの違いでどう変わる?」です。条件は圧雪路の旋回路コース(半径25m)を時速20km/hと30km/hで走行、および直線路で時速40km/hからの急制動でした。

チェーンの種類旋回 時速20km/h旋回 時速30km/h急制動(40km/h)
金属チェーン(亀甲型)安定して走行後輪が滑り出しオーバーステアが発生
金属チェーン(はしご型)安定して走行前輪が滑り出しアンダーステアが発生
非金属チェーン(ウレタン系)安定して走行安定して走行できた最も短い距離で停止

JAFの記述はこうです。時速20km/hでは3種類とも安定して走行でき、「時速30km/hになると非金属チェーンのみ安定し走行できた。」。金属チェーン(亀甲型)は「前輪はしっかりグリップしたが、後輪が滑り出し、カーブの内側に切れ込むオーバーステアが発生。」、はしご型は前輪が滑って外側に膨らむアンダーステアが出ました。急制動については「時速40km/hからの急制動の結果は、非金属チェーンが最も短い距離で止まることができた。」としています。

前日の登坂テストで唯一勾配20%を上りきった亀甲型が、翌日の旋回ではスピンする側に回りました。上る性能と、曲がる・止まる性能は別物で、同じ3種類でも順番が入れ替わる — これが2日分の試験結果を並べたときに出てくる答えです。どちらか一方だけを見て最善の種類を決められる道具ではありません。

ただしJAFは、この旋回・急制動テストについて「今回実施した登坂路は比較的凍結路面に近い圧雪路であったが、異なる雪質では結果が変わることもあるため、注意が必要である。」と条件を明示しています。まとめでも「路面状況や車の駆動方式、タイヤの種類などで結果が変わることがあるので十分注意が必要である。」としています。順位そのものを持ち帰るのではなく、種類によって得意が違うという事実を持ち帰るのが正しい読み方です。

着ける場所を間違えると、坂を上れず、止まれない

もうひとつのテスト「雪道でのタイヤチェーン、駆動輪以外に装着していませんか?」(2018年2月15日・同研究所)は、前輪駆動のトヨタ プリウスの新品のノーマルタイヤに新品のチェーンを装着し、前輪(駆動輪)に着けた場合と後輪(非駆動輪)に着けた場合を比べています。

  • 登坂(勾配12%) — 前輪装着はスリップせず上りきれた。後輪装着は途中でスリップして上りきれなかった
  • 旋回(R=6mの旋回路に30km/hで進入) — 前輪装着はパイロンに沿って曲がれた。後輪装着はハンドルを左に切っても操舵輪である前輪が滑り、走行ラインが外側に大きく膨らんだ
  • 制動距離(平坦路・40km/hから急ブレーキ・ABS作動) — 後輪装着は前輪装着より約7m延びた

3つ目は参考テストとして行われたものです。JAFは、ブレーキは4輪すべてに制動力がかかるため装着位置の影響は小さいと思われたが、ブレーキの際は前輪に荷重がかかり前輪の制動力が重要になるため、この前輪駆動のテスト車では誤装着の影響が大きくなったと思われる、と説明しています。曲がれないだけでなく、止まるための距離まで変わるということです。

JAF自身のまとめは強い言い方をしています。「タイヤチェーンは駆動輪に装着しないと坂道を上れないだけでなく、カーブで対向車線に飛び出すなど、重大事故につながる可能性があります。」。国土交通省も「すべてのタイヤにチェーンが必要なの?」という問いに「駆動輪にタイヤチェーンを着けることが基本です。」と答えています。前輪駆動なら前、後輪駆動なら後ろ。自分の車がどちらかを即答できない場合は、買う前に取扱説明書で確かめておく価値があります。JAFも「タイヤチェーンの装着位置を車の取扱説明書で確認しておくことに加え、事前に装着する練習もしておきましょう。」と結んでいます。

4WDは例外ではない — 下り坂ではむしろ長くなった

4WDならチェーンは要らない、と考えたくなりますが、JAFはそこも測っています。「4WD なら雪道でも安心?2WD と登坂・ブレーキ性能を比較」(2018年2月14日・同研究所)は、2WD2台と4WD2台の計4台に新品のスタッドレスタイヤを装着し、圧雪路で登坂と制動を比べたテストです(チェーンについての記載はありません)。

テスト内容2WD(前輪駆動)4WD
上り坂 勾配9%上りきれた上りきれた
上り坂 勾配20%途中でスリップし上りきれず2台とも安定して上りきれた
平坦路の制動距離(40km/h・ABS作動)20〜22m20〜22m(大きな差なし)
下り坂 勾配9%の制動距離(同上)約29〜33m約35〜40m

ここでも登る話と止まる話で結果が逆を向いています。急な上り坂では4WDだけが上りきれた一方、下り坂の制動距離は4WDのほうが長くなりました。JAFは車両重量が最も重かったランドクルーザープラドについて、下り坂の制動距離が平坦路に比べて約2倍長くなったとしています。まとめの一文は明快です。

4WDの車であっても制動距離が短くなることはありません。

国土交通省が4WDを規制の対象外にしなかった理由も、まさにこの「重量が大きいため、下り坂で急ブレーキをかけた時に、止まるまでの距離が長くなる」という点でした。駆動方式が効くのは発進と登坂で、停止距離は別の話ということです。JAFもこのテストのまとめで「速度を抑えて急な操作を避けるなど、雪道では慎重に走行しましょう。」としています。

買う前に決めておく4つのこと

  1. 駆動輪はどちらか — 前輪駆動なら前、後輪駆動なら後ろに着けるのが基本。4WD車はチェーンを装着する車輪が車種によって異なるため、取扱説明書での確認が要ります。サイズもタイヤの表示(例: 175/65R15)に合ったものを選びます
  2. どこで、どう走るつもりか — 急な峠を上るのか、市街地の雪や凍結で曲がる・止まる場面が多いのか。JAFの2日間のテストでは、急勾配の登坂と、旋回・急制動とで強い種類が入れ替わりました
  3. 規制中に通れる種類か — 国土交通省は、チェーン規制中に通れるタイヤチェーンについて「自動車用品店などで販売されているものであれば問題ありません。」としたうえで、「ただし、スプレーのように薬剤を吹き付けるタイプのものではチェーン規制中に通ることはできません。」と明記しています。参考として挙げられている種類は、金属チェーンタイプ(金属製のチェーンやワイヤーの製品)、ウレタン&ゴムチェーンタイプ(ゴムなどの樹脂製の製品)、布製カバータイプ(アラミドなどの特殊繊維製の製品)の3つです。なお2017年の登坂テストでは、スプレーチェーンは勾配12%の坂の途中からの発進で上れませんでした
  4. 一度、着けてみる — 装着は路肩で、夜間で、雪の中になります。同じ作業を明るい自宅ではじめて試すのと、その場ではじめて試すのとでは別物です

保管場所も決めておきたいところです。JAFは登坂テストのまとめで「急な降雪の可能性もあるので、常にタイヤチェーンを車内に備えておくと良いでしょう。」としています。降ってから買いに行くのでは、売り場に残っているものしか選べません。

着けたあとが本番 — チェーンは速度を上げる道具ではない

ここまでの5つのテストは、どれも、装備を足せば走れるという結論では終わっていません。JAFは登坂テストのまとめを「雪道においてノーマルタイヤにタイヤチェーンを装着し走行する場合においても、急な坂道に注意し慎重に走行しましょう。」と締め、旋回・急制動テストでは「タイヤチェーンを装着しても、しっかり速度を抑えて走行することと、急ブレーキ、急加速など「急」の付く運転は避け、慎重な運転を心がけましょう。」としています。

実際、3種類のチェーンが挙動を乱したのは時速30km/hの旋回で、20km/hでは3種類とも安定して走れていました。速度を落とせば差が消え、上げれば種類の差が出る。チェーンは、着けたから大丈夫という保証ではなく、慎重な運転と組み合わせて初めて効く装備です。

装着に自信がないときや外れてしまったときのために、JAFのロードサービスはタイヤチェーンの着脱にも対応しています(会員なら現場での応急作業は無料、非会員は有料です)。スタッドレスタイヤの寿命の見方(プラットホーム)はタイヤ交換の時期と費用にまとめています。

まとめ

  • チェーン規制は異例の降雪時に、峠などの限られた区間で実施される。スタッドレスでも4WDでも、チェーンがなければ通れない
  • その理由は実測で説明できる。国土交通省が参考に挙げたJAFのテストでは、氷盤路(勾配9%)はスタッドレスタイヤでは上れず、チェーンを足して上れた
  • ノーマルタイヤ+チェーンの登坂テストでは、勾配15%は3種類とも上れたが、勾配20%を上りきれたのは金属チェーン(亀甲型)のみ
  • その翌日の旋回・急制動テストでは逆転。時速30km/hで安定して曲がれたのは非金属チェーンだけで、亀甲型は後輪が滑ってオーバーステアが発生した。急制動も非金属が最短
  • 駆動輪でない側への装着は坂を上れないうえ、前輪駆動のテスト車では平坦路の制動距離が約7m延びた
  • 4WDは急な上り坂に強い一方、下り坂の制動距離は2WDより長かった(スタッドレスタイヤでの比較。約29〜33mに対し約35〜40m)
  • どのテストもJAFの結びは同じ — チェーンを着けても速度を抑え、「急」の付く操作を避ける

出典: 国土交通省「チェーン規制について」(道路:雪防災)。JAF(日本自動車連盟)「JAFユーザーテスト」より「雪道での登坂テスト」(2017年2月12日実施)、「4WD なら雪道でも安心?2WD と登坂・ブレーキ性能を比較」(2018年2月14日実施)、「雪道でのタイヤチェーン、駆動輪以外に装着していませんか?」(2018年2月15日実施)、「あなたのチェーンは急坂を上れますか?」(2019年2月19日実施)、「雪道での旋回と急制動テスト チェーンの違いでどう変わる?」(2019年2月20日実施)。いずれも2026年8月19日に確認しました。JAFの各テストは特定の車両・路面・タイヤでの結果です。登坂テスト(2019年)には「結果は一例であり雪道や車の駆動方式、タイヤの種類などで結果が変わることがある。」、旋回・急制動テストには「路面状況や車の駆動方式、タイヤの種類などで結果が変わることがあるので十分注意が必要である。」との注記があります。規制区間・規制内容は変わることがあるため、通行前に道路管理者の最新の発表をご確認ください。

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