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ステップワゴン vs ノア/ヴォクシー — 同じ床下を、ホンダは席の置き場に、トヨタは荷物の置き場にした

公開: 2026-08-17 / 更新: 2026-08-19

クルマを知るのイメージイラスト

2022年、日本の家族向けミニバンの主力2台が、そろって全面刷新されました。トヨタのノアならびにヴォクシーが1月13日発売、ホンダのステップ ワゴンが5月27日発売。約4か月半違いで、トヨタが自社の分類として使うコンパクトキャブワゴンの枠に、両社の最新型が並んだことになります。

スペック表を横に並べると、この2台はよく似ています。スライドドア、3列シート、ハイブリッド設定あり。カタログ的な説明はほとんど同じ言葉で書けてしまいます。

ところが、両社が出した発売時のニュースリリースを読み比べると、紙面を割いた場所がはっきり違います。しかもその違いは、床下という同じ空間の使い道に、そのまま出ていました。この記事では両社の原文だけを使って、その分かれ目をたどります。

ホンダは「3列目」の話をした

ホンダは新型ステップ ワゴンを「6代目」と位置づけ、グランドコンセプトを「#素敵な暮らし」としています。リリースは目指した提供価値を3つ挙げていて、そのうち2つが室内の話です。

●くつろぎの室内空間:国内Honda車 史上最大の室内空間※1と、どの席でも快適に過ごせるリビングのような居住性を目指しました。

●移動時の信頼性:車両感覚をつかみやすい視界と、乗り物酔いをしづらくする工夫により、乗る人みんなが安心して過ごせる室内を目指しました。

ここで「どの席でも」と書いてあることが、あとで効いてきます。ちなみに国内Honda車 史上最大という表現には注釈が付いていて、根拠は「2022年5月時点 室内三寸法(室内長<フロントガラスの上端~3列目着座時視点位置>、室内幅、室内高)に基づく Honda調べ」とされています。室内長の測り方の基準点にも、3列目が使われています。

そしてパッケージングの節で、ホンダは3列目に踏み込みます。

3列目シートは、着座位置を高くするとともに、前方のシート、ヘッドレストの形状を工夫することで開放的な視界を実現。シートクッションの厚みを増すことで、3列目においても快適な座り心地を実現しています。なお、3列目シートはステップ ワゴンの特長でもある室内を広く使用できる床下収納を採用しています。

3列目シートの居場所は、床の下です。1月の初公開時のリリースでは、この点をさらに直接的に書いていました。

3列目シートは、ご好評いただいている床下収納はそのままに、着座位置を高くし前方のシート、ヘッドレストの形状を変更したことで開放的な視界を実現。

ご好評いただいている床下収納はそのままに。つまりホンダにとって床下収納は、この世代で新しく足した機能ではなく、触ってはいけない前提だったということです。そのうえで、座り心地と視界を積み増した。

ホンダが室内の話で使った言葉

もうひとつ、ホンダのリリースに繰り返し出てくる言葉があります。

さらに、水平基調なデザインによって乗る人の視野を安定させることで乗り物酔いを起こしにくくし、新たな価値として提供しました。

デザインの話を、見た目ではなく体調の話として説明しているわけです。内装の水平基調は、ふつうなら「広く見える」「上質に見える」という説明になるところですが、ホンダはそこを乗り物酔いに接続しました。

トヨタは「2列目」の話をした

一方のトヨタは、ノアとヴォクシーを「4代目」とし、初代を2001年11月発売のクルマとして紹介しています。

2001年11月に発売したノアとヴォクシーは、乗り降りしやすいスライドドア、多くの人や荷物を乗せられる広く快適な室内空間など、ミニバンならではのうれしさを徹底して追求したコンパクトキャブワゴンとして開発。

新型では骨格に「TNGAプラットフォーム(GA-C)」を採用したと書かれています。TNGAという考え方そのものについてはトヨタのTNGAとは何だったのかで扱っています。

室内の説明は、まず寸法から始まります。

ボディ骨格の最適化によって、左右のCピラー間距離1,295mm(従来型比+75mm)*1を実現。室内高1,405mmと相まって、開放感ある室内空間を創出

そして「快適な後席シート」という見出しが立つのですが、その中身はすべて2列目の話です。

7人乗り仕様車のセカンドシートには、キャプテンシートを採用。クラス初*3となるオットマン機構とシートヒーター*4に加え、折りたたみ式大型サイドテーブルなどを装備。シートを一旦横にスライドさせることなく、ストレート超ロングスライド(スライド量745mm*1)を実現。快適性や利便性の良さも追求

745mmという数字が出てきます。8人乗り仕様のベンチシートでも705mmです。2列目が前後に74.5cm動くという設計は、2列目を主役に置いていることの表明にほかなりません。「クラス初」の根拠は「コンパクトキャブワゴンクラス。2022年1月現在、トヨタ自動車(株)調べ」と注記されています。

使い勝手の節でも、トヨタが力を入れて書いたのは乗り降りの瞬間でした。

パワースライドドア開閉と合わせて“からくり”を使って機械的にドア下部からステップを展開・格納。ステップ高を200mm*7とすることで、子供から高齢者まで家族みんなに優しい乗降性を提供

この200mmという値には「2WD車の場合。4WD車では225mm。社内測定値」という注記が付いています。電動ではなく“からくり”、つまりドアの動きから機械的に力を取り出す仕掛けだと、わざわざ書いています。これは装備の説明であると同時に、コストと信頼性の設計思想の説明でもあります。

同じ床下に、違うものを沈めた

ここまで読むと、両社の分かれ目がひとつの場所に集まっていることが見えてきます。床の下です。

トヨタの新型ノア/ヴォクシーにも、床下の空間はあります。ただし、そこに入るものが違います。

大容量104L*2ものスーパーラゲージボックス。高さのあるものやスーツケースなどの収納に便利な床下収納スペースを確保

104リットルの容量は「VDA法による、スペアタイヤレス時の社内測定値」と注記されています。トヨタは床下に荷物を沈め、ホンダは床下に座席を沈めた。同じ「床下収納」という言葉を、両社とも自社のリリースで使っているのに、入れているものが違います。

これは容量の奪い合いです。3列目シートが床下に収まるなら、そこにスーツケースは入りません。逆に104Lの箱が床下にあるなら、3列目シートは別の場所に片づけることになります。どちらか一方しか選べない種類の設計判断だと考えられます。ただし、両社のリリースは3列目シートの格納機構と床下の荷室が同じ空間を取り合っているとは書いていません。ここは両社の記載から本サイトが推測した部分です。

トヨタのリリースで、3列目が登場する場所

興味深いのは、トヨタの発売リリース本文でサードシートが「座る席」として説明される箇所が無いことです。本文でサードシートが出てくるのは、2列目の説明のなかの、この一文だけです。

パッケージオプションとして、手すり付きの専用2人掛けベンチシートタイプを設定。2列目左側に乗降スペースを確保することで、セカンドシートにチャイルドシートを設置してもサードシートへのアクセスが容易

サードシートは、座り心地を語られる席ではなく、たどり着く先として登場しています。ほかにサードシートの語が出てくるのは、ウェルキャブ(福祉車両)の「車いす仕様車タイプⅡ(サードシート付)」「(サードシート無)」というグレード名と、その一覧表です。

念のため書いておくと、これは実車の話ではなく、リリースの書き方の話です。ノア/ヴォクシーは7人乗り・8人乗りのミニバンですから3列目の座席は当然あり、ウェルキャブのグレード名にも登場します。ここで見ているのは、両社がその世代の商品説明で何を主役に据えたかという選択です。

「酔い」という語が、片方にしか出てこない

もうひとつ、リリースの語彙を突き合わせると出てくる違いがあります。ホンダの2本のリリース(1月の初公開・5月の発売)には「酔」の字がそれぞれ3回出てきますが、トヨタの発売リリースには一度も出てきません。「視界」「視野」という語も、ホンダにはあり、トヨタの発売リリースには出てきません。

代わりにトヨタが書いたのは、ステップ高200mm、Bピラーのロングアシストグリップ(グリップ最下端地上高895mm)、後方からの接近車両を検知してスライドドアを止める「安心降車アシスト(ドアオープン制御付)」といった、乗り降りの瞬間の数字と装備でした。

ここから先は本サイトの整理ですが、ホンダは乗っている間の体調に、トヨタは乗り降りの動作に、それぞれ説明の重心を置いたと読めます。どちらも「家族みんなが」という言葉を使いながら、その家族が困る場面の想定が違っていた、ということです。

なお、ホンダも乗降に手を打っていないわけではありません。同社は新型でパワースライドドアに「軽く指先を触れるだけで開閉ができる静電タッチセンサー式を世界初採用」(同社調べ)と書いています。違うのは、そこにどれだけ紙面を割いたかです。

どちらが正しいという話ではない

3列目を床下にしまえるということは、3列目を使わない日に、その席を車外へ降ろさずに片づけられるということです。ホンダが「室内を広く使用できる床下収納」と書いているのは、3列目を使わない日の使い方を価値として数えているからでしょう。

床下に104Lの箱があるということは、3列目に人を乗せたままでも、その足元より下にスーツケースが入るということです。7人乗ったまま旅行の荷物を積めるのは、床下を荷物に割り当てた側の強みです。

家族の使い方は、この2つのどちらかに寄ります。人数は多くないが積む日がある家と、人数が多くて荷物も多い家では、必要な床下が違う。両社は床下という同じ場所を、違う家族に向けて配ったと読めます。

同じことは、もっと小さな枠でも起きています。軽トラックのキャリイとハイゼットが正反対の定義から出発した経緯はキャリイ vs ハイゼットの比較に、軽のオープン2シーターでダイハツが荷室を残しホンダが削った話はコペン vs S660の比較にまとめています。スライドドアと広い室内という組み合わせが軽自動車の側からどう生まれたかはスーパーハイトワゴンの誕生で、ミニバンの動力源としてのハイブリッドの仕組みはハイブリッドの仕組みで扱っています。

出典・注記: 本記事の事実関係は、本田技研工業のニュースリリース「新型「STEP WGN(ステップ ワゴン)」を発売」(2022年5月26日)ならびに「新型「STEP WGN(ステップ ワゴン)」を初公開」(2022年1月7日)と、トヨタ自動車のニュースリリース「新型「ノア」ならびに「ヴォクシー」を発売」(2022年1月13日)に基づきます。「国内Honda車 史上最大の室内空間」は2022年5月時点の室内三寸法に基づく同社調べ、パワースライドドアの静電タッチセンサー式「世界初採用」も同社調べの記載です。オットマン機構とシートヒーターの「クラス初」はコンパクトキャブワゴンクラスにおける2022年1月現在のトヨタ自動車株式会社調べ、スーパーラゲージボックスの104LはVDA法によるスペアタイヤレス時の社内測定値、Cピラー間距離1,295mmと2列目のスライド量には「社内測定値。測定箇所により数値は異なります」、ユニバーサルステップのステップ高200mmには「2WD車の場合。4WD車では225mm。社内測定値」との注記が付いています。各リリースにおける語の出現回数と、サードシートが登場する箇所の内訳は、両社のリリース本文を対象に本サイトが数えたものです。リリースに記載が無いことは実車にその装備や機能が無いことを意味しません。乗っている間と乗り降りの動作という対比、および床下の空間を座席と荷物が取り合っているという読み方は、両社の記載から本サイトが整理・推測したものです。発売日・世代の呼称は各社の記載によります。

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