エアゲージ(タイヤ空気圧計)の選び方 — 日常点検の1番目の項目は、目で見ても分からない

タイヤの点検といえば、多くの人が思い浮かべるのは溝でしょう。スリップサインが出ていないか、しゃがんで覗き込む。あの動作です。
ところが、法律が定める日常点検の基準を読むと、タイヤの点検内容は4つ挙げられていて、溝は最後の4番目に置かれています。1番目に来るのは別の項目です。そして日本自動車タイヤ協会(JATMA)が高速道路や一般道路で実際に車を点検した結果を見ると、この順番には理由があることが分かります。
日常点検基準は、タイヤの何を見よと書いているか
自家用乗用車の日常点検の内容は、自動車点検基準(昭和二十六年運輸省令第七十号)の別表第2「自家用乗用自動車等の日常点検基準」に定められています。そのうち「2 タイヤ」の欄には、次の4つが並んでいます。
- タイヤの空気圧が適当であること。
- 亀裂及び損傷がないこと。
- 異状な摩耗がないこと。
- 溝の深さが十分であること。
この4項目のうち、1番目が空気圧です。そして根拠となる道路運送車両法第47条の2第1項は、点検の方法についてこう書いています。
自動車の使用者は、自動車の走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期に、国土交通省令で定める技術上の基準により、灯火装置の点灯、制動装置の作動その他の日常的に点検すべき事項について、目視等により自動車を点検しなければならない。
灯火の点灯も、亀裂も、摩耗も、溝の深さも、目で見れば分かります。4項目のうち空気圧だけが、見ただけでは判断できません。条文の「目視等」の「等」には、道具を使う点検も含まれると読むことができます。なお「目視等により」は別表第2の全項目に共通する点検方法の定めで、タイヤに限った規定ではありません。エアゲージ(タイヤゲージ、空気圧計とも呼ばれます)は、そのための道具です。
なお同条第2項により、事業用のバス・トラック・タクシー等は1日1回、運行の開始前に点検することが求められています。自家用乗用車は第1項の「適切な時期に」が適用されます。どのくらいの間隔が適切なのかは、条文には書かれていません。
実測すると、不良の内訳が偏っている
その「適切な時期」の答えに近いものが、実測データにあります。JATMAは全国のサービスエリアなどで駐車中の車のタイヤ点検を続けており、結果を公表しています。集計は高速道路と一般道路に分かれています。2025年の年間集計は次のとおりです。
| 2025年 年間タイヤ点検結果 | 高速道路 | 一般道路 | 計 |
|---|---|---|---|
| 点検車両(台) | 213 | 127 | 340 |
| タイヤ整備不良車両(台) | 101 | 82 | 183 |
| 不良率(%) | 47.4 | 64.6 | 53.8 |
点検した340台の半分以上が整備不良でした。注目したいのはその内訳です。全項目を挙げます(1台で複数の項目に該当する場合があるため、車両台数と件数は一致しません)。
| 不良項目(2025年・計) | 件数 | 不良率(%) |
|---|---|---|
| タイヤ溝不足 | 2 | 0.6 |
| 偏摩耗 | 5 | 1.5 |
| 外傷(コードに達するもの) | 3 | 0.9 |
| 釘・異物踏み | 0 | 0.0 |
| 空気圧不足 | 169 | 49.7 |
| その他 | 18 | 5.3 |
| 計 | 197 | — |
6項目を同じ物差し(点検車両340台に対する件数)で並べると、空気圧不足が169件で、残り5項目の合計28件の6倍以上あります。そして多くの人が真っ先に見る溝の不足は、340台でわずか2件でした。
調査ごとに不良率は大きく違う。それでも内訳の順位は変わらない
ここで正直に書いておくべきことがあります。JATMAが公表している点検は複数あり、不良率そのものは調査によって大きく違います。
| 点検 | 点検台数 | 不良台数(不良率) | 空気圧不足 | 溝不足 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年 年間集計 | 340台 | 183台(53.8%) | 169件(49.7%) | 2件(0.6%) |
| 2025年10月23日 浜名湖SA | 78台 | 58台(74%) | 57件(73%) | 0件(0%) |
| 2026年度 タイヤの日(全国4か所) | 81台 | 13台(16%) | 10件(12%) | 0件(0%) |
ただし、この3つは独立した別々の調査ではありません。JATMAは年間の集計について「タイヤの日におけるタイヤ点検、浜名湖SAにおけるタイヤ点検、各地区におけるタイヤ点検結果の合計です。」と説明しており、下2行は1行目の内訳の一部にあたります。そのうえで、16%から74%まで開きがあります。浜名湖サービスエリアの点検は前回39%から74%へ、対前回で35ポイント増えたと資料に記載があります。点検の場所も対象も時期も異なるため、これらの数字を横に並べて日本の車の何%が不良、と一般化することはできません(資料は理由を説明していないので、ここでは差があるという事実だけを書きます)。
それでも、3つの調査に共通していることが1つあります。不良項目の1位はいずれも空気圧不足で、溝不足は0件か2件しかないということです。不良率の水準が変わっても、内訳の偏りは変わりません。なお2026年度のタイヤの日の点検では、乗用車系71台の不良率が14%だったのに対し、貨物系10台では30%(空気圧不足3件・30%)でした。
なぜ空気圧だけが減るのか
理由は単純で、減るものだからです。JATMAは自然な低下について、次のように説明しています。
タイヤは充てんされた空気の自然漏えいにより空気圧が徐々に低下します。使用条件等によって差異があり一定ではありませんが、1ヶ月で5%程度低下します。
溝は走らなければ減りませんが、空気圧は駐車したままでも下がります。しかも減っていく過程に、運転していて分かる変化がありません。同じ資料は、点検の頻度についてこう続けています。
環境・安全の両面から最低1ヶ月に1度は適正な空気圧を調整・維持して下さい。
法令の「適切な時期」に対する、業界団体としての具体的な答えがこれにあたります。JATMAが配布している啓発チラシは、2015年から2019年に高速道路で実施したタイヤ点検の結果から、車両指定空気圧未満だった車の平均値を「4台に1台が空気圧不足!」という形で示しています(平均値であり、個々の点検の結果ではない点に注意してください)。
燃費にも効いている
空気圧が下がると転がり抵抗が増えます。JATMAは「転がり抵抗は空気圧が減少すると急激に増⼤する傾向にあります。」と説明しています。同じ資料によると、タイヤの燃費への寄与率は一般市街地走行で7〜10%、一定速度走行では20〜25%です。
具体的な悪化率も公表されています。適正空気圧より50kPa不足した状態での燃費の悪化比率は、市街地2.5%・郊外4.3%・高速道4.8%(出典は一般財団法人 省エネルギーセンターとチラシに明記されています)。JATMAはこれを150円/Lで試算し、「実質4円~7円/ℓ高いガソリンを使用してるのと同じ計算になる!」と表現しています。
ただし、高めに入れておけばいいわけではない
ここがこの道具の性格を決める部分です。転がり抵抗が減れば燃費は良くなる。ならば高めに入れておけばいいのかというと、JATMAははっきり止めています。
一般的な転がり抵抗とウェット制動距離の相関関係については、タイヤの転がり抵抗を低減(良く)すれば、濡れた路面での制動距離は伸び(悪化)、つまり背反の傾向にあります。
このため、適正範囲以上に空気圧を上げたり、タイヤの性能についても無闇に転がり抵抗の低減を追い求めることのないようにすることが重要です。
つまりエアゲージは空気を増やすための道具ではなく、車が指定している値に合わせるための道具です。上にも下にも外れてほしくない数字がひとつあり、その数字に合っているかを確かめる。それがこの製品カテゴリの役割になります。当サイトのタイヤ交換の時期と費用でも触れているとおり、空気圧の過不足は摩耗の仕方にも現れます。
買う前に読んでおく仕様 — 4つ
ここから先は、製品の使用感の話ではなく仕様表と公開資料から読み取れる範囲の整理です。当サイトは持っていない製品の使用レビューは書きません。
① 測定範囲 — 応急用タイヤは指定値が約2倍高い
JATMAのチラシに載っている車両のラベルの例には、2つの値が併記されています。
- タイヤサイズ 155/65R14 75S(前後輪共) → 220 kPa {2.2 kgf/cm²}
- 応急用タイヤ T105/90D12 → 420 kPa {4.2 kgf/cm²}
応急用タイヤ(いわゆるテンパータイヤ)の指定値は、この例では通常のタイヤの約2倍です。測定範囲の上限が通常タイヤの指定値付近までしかない製品では、応急用タイヤの点検に使えません。スペアタイヤを積んでいる車では、仕様表の測定範囲を確認する価値があります。
② 単位 — kPa と kgf/cm² の両方が使われている
上のラベルのように、車両側の表示はkPaと、括弧内のkgf/cm²が併記されている場合があります。製品の目盛りが片方の単位しか持たない場合、ラベルの併記表示と読み合わせることになります。数値そのものが約100倍違う(この例では220と2.2)ため、桁を取り違えないよう単位を先に確認します。
③ 空気を抜く機構があるか
JATMAのチラシの手順図には、補充を示すプラスのアイコンと並んで、マイナスのアイコンに「抜く」という表示があり、同時に「※機具によって使用方法は異なります。」と注記されています。入れすぎたときに抜いて合わせられるかどうかは製品によって違う、ということです。前章のとおり指定値より高すぎるのも避けたい以上、この機構の有無は選定の分かれ目になります。
④ 自宅で測れるかどうか(携帯性)
これは仕様というより使い方の制約です。チラシは点検のタイミングをこう指定しています。
空気圧点検は、なるべく走行によって暖まる前に行ってください。
浜名湖サービスエリアの点検結果の注記には「空気圧は実測(ホット状態)。」と条件が明記されており、資料の側で温まる前と温まった後が区別されていることが分かります。給油ついでにガソリンスタンドで測る場合、そこまで走ってからの測定になります。自分で持てるエアゲージには、出発前の駐車場で測れるという、据置きの機器にはない利点があります。
測り方は4手順 — 最後の1つを忘れない
JATMAのチラシが示す手順は次のとおりです。
- 指定空気圧をチェックする(車両のラベルに記載されています)
- エアバルブのキャップを外して空気圧を計測する
- 車両指定空気圧を下回っている場合は、指定空気圧まで補充する
- バルブ口から空気が漏れていないことを確認した上で、必ずエアバルブのキャップを締める
4番目がわざわざ手順として立てられているのは、キャップが単なる飾りではないからです。チラシも「必ず」と書いています。
そしてチラシは、最後にこう添えています。「空気圧点検や補充などで不安・不明点があれば、最寄りのタイヤ販売店・ガソリンスタンド等にお気軽にご相談ください」。自分で測ることと、プロに任せることは対立しません。長距離の前の点検については帰省・長距離ドライブ前の点検チェックリストにまとめています。
まとめ
- 自家用乗用車の日常点検基準は、タイヤの点検内容の1番目に空気圧、4番目に溝の深さを挙げている
- 根拠条文は点検を「目視等により」行うとしているが、4項目のうち空気圧だけは見ても分からない
- JATMAの2025年の年間集計(340台)では、溝不足2件(0.6%)に対し空気圧不足169件(49.7%)。不良率の水準は調査ごとに16%〜74%と違うが、内訳の1位が空気圧不足である点は共通
- 空気圧は走らなくても1ヶ月で5%程度自然に低下する。JATMAは最低1ヶ月に1度の調整・維持を求めている
- ただし高すぎるのも避ける(転がり抵抗とウェット制動距離は背反)。エアゲージは増やす道具ではなく指定値に合わせる道具
- 仕様で見るのは測定範囲(応急用タイヤは指定値が高い)・単位(kPaとkgf/cm²)・空気を抜けるか・自宅で測れるかの4点
出典: 日本自動車タイヤ協会(JATMA)「タイヤ点検」および「タイヤの性能と技術」(いずれも2026年8月17日確認)、同協会の啓発資料「タイヤの「空気圧」をチェックしよう!」(2020.09)、道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第47条の2、自動車点検基準(昭和二十六年運輸省令第七十号)別表第2。法令の条文はe-Gov法令検索で2026年8月17日に確認した現行の内容です。燃費の悪化比率の出典は啓発資料に「一般財団法人 省エネルギーセンター」と明記されており、1Lあたりの金額換算はJATMAの試算(150円/L計算)です。点検結果の数値は各調査の公表値で、点検の場所・対象・時期が異なるため相互に比較できるものではありません。製品の仕様は製造者により異なるため、購入時は最新の表示をご確認ください。









