災害時、車から電気は何W取れるのか — 定格9,000Wの給電器でも、100Vのコンセント1口は1,500W

停電のニュースを見るたびに、駐車場にある車から電気が取れないかと考える人は多いはずです。ポータブル電源も外部給電器も、カタログには何千ワットという数字が並んでいます。では、その数字を買えば家電が動くのでしょうか。
JAF(日本自動車連盟)は「JAFユーザーテスト」として、4種類の車を並べて「車のバッテリーで家電がどの程度使えるのか」を実測しています。また国土交通省と経済産業省は2026年8月4日、電動車から医療機器へ給電するためのマニュアルの改定版を公表しました。この2つを並べると、使える電力を決めているのは道具の定格ではなく、電気の取り出し口と、つなぐ機器の立ち上がり方だと分かります。
先に結論
- JAFの実測では、駆動用バッテリーを積まない一般的な車にインバーター(定格出力1,000W)をつないだ場合、800Wの電気ストーブを9分間使ったところで保護回路が働き、給電が止まった。バッテリーは新品で、エンジンをかけた状態でも電圧の降下が確認されている
- 同じテストで電気自動車は1,250Wの電気ポットで30回お湯を沸かしてもバッテリーが3分の2残ったのに対し、ハイブリッド車はバッテリーの電気だけでは1回しか沸かせなかった(エンジンを始動させない条件での測定で、JAFはエンジンが始動できれば燃料が続く限り供給できるとも書いている)。電動車でひとくくりにはできない
- 国土交通省・経済産業省の資料は、車からの給電を車室内の100V電源用コンセント(0.1〜1.5kW)/外部給電器(1.5〜9kW)/固定型給電器(3〜9kW)の3経路に整理し、注記でシガーソケットやUSBポートはそこでいう充電端子に含まれないと明記している
- 外部給電器は定格9,000Wの機種でもAC100Vのコンセントは6口すべてが1口1,500W。増えるのは口の数で、AC100Vの1口から取れる上限は機種によらず変わらない(AC200Vの口を持つ機種はそちらが6,000W)
- しかも同資料は、定格1,500W以下の機器でも、ものによっては起動時に大きな電流が流れて正常に作動しないおそれがあると書いている。ワット数の大小だけでは決まらない
4台を並べて測ると、電動車のひとくくりが崩れる
JAFユーザーテスト「災害時におけるクルマからの電源供給」は、2018年2月7日に埼玉県戸田市の駐車場で行われました。用意したのは電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、ハイブリッド車(HV)、一般的な車の4台です。
JAFはテストの背景をこう書いています。
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)が災害時の電源供給として注目されている。駆動用の大容量バッテリーを積み、ACコンセントも装備するため、家電を長時間使うことができると言われている。
1つ目のテストは、どんな家電が使えるかです。テストに用いたEV・PHV・HVには1,500Wまでの電気製品が使えるACコンセントが装備されている、とJAFは書いています(後述のとおり、装備の有無は車種・グレードやオプションで変わります)。一般的な車にはそれがないため、車のDC電源をAC電源に変換するインバーター(定格出力1,000W)をバッテリーに直接つないで検証しています。結果は、EV・PHV・HVでは最も消費電力の高いホットプレートまで使えた、というものでした(HVについてJAFは、エンジン始動が前提になると付記しています)。
2つ目のテストが、差をはっきり見せます。こちらは一般的な車を除くEV・PHV・HVの3台が対象で、1,250Wの電気ポット(1.2リットル)で、5時間の間に何回お湯が沸かせるかを測っています。EVとPHVは事前に満充電、HVは充電器で充電できないためバッテリー残量3分の2で開始し、いずれもエンジンを始動させず、バッテリーの蓄電量だけで測っています。PHVとHVは本来、蓄電量が減るとエンジンが始動して電気を供給しますが、JAFは災害時に燃料の余裕がない場合やアイドリングができない場合を想定して、あえてその条件で測ったと注記しています。
| 車種 | 沸かせた回数 | JAFの記述 |
|---|---|---|
| 電気自動車(EV) | 30回 | バッテリーは3分の2程度残っていた |
| プラグインハイブリッド車(PHV) | 27回 | 28回目の途中でエンジンが始動した |
| ハイブリッド車(HV) | 1回 | バッテリー容量が小さく、開始時の充電量も3分の2程度だった |
出典: JAFユーザーテスト「災害時におけるクルマからの電源供給」(2018年2月7日実施)。数値・記述は同テストのページの掲載値です。
30回と1回。同じ電気も使えるクルマでも、蓄えている電気の量が違えば結果はこれだけ離れます。JAFはHVについて、燃料があってエンジンもかけられる状況でないと十分な電源供給ができなかった、とまとめています。ハイブリッド車の給電能力は、バッテリーではなく燃料の残量で決まるということです。裏を返せば、燃料さえあれば話は変わります。JAFのまとめはこう書いています。
EVやPHVは災害時の電源として活用でき、PHVとHVはエンジンが始動できれば、燃料が続く限り電気の供給が可能である。
つまり1回という数字は、ハイブリッド車の能力そのものではなく、エンジンをかけられない条件下での値です。
一般的な車+インバーターは、定格より先にバッテリーが音を上げる
いちばん身近なのは、インバーターを使う方法でしょう。数千円から買えて、車を選びません。JAFのテストは4台目の一般的な車でこれを試しています。ここで押さえておきたいのは、JAFがインバーターをバッテリーに直接つないだ点です。シガーソケットから取る製品もありますが、テストはそれより条件のよい直結で行われています。
定格出力1,000Wのインバーターに対し、電気ポット(430W)や電気ストーブ(400W・800W)は使用できました(この430Wのポットは、後で出てくる1,250Wのポットとは別の機器です)。定格内なので当然に見えます。ところが、その先にこう続きます。
ただ、電気ストーブを800Wで9分間使用したところ、バッテリー(新品)の電圧が降下し、インバーターの保護回路によって電気の供給が停止した。
バッテリーに直結し、新品のバッテリーで、定格の範囲内の機器で、9分です。しかもJAFは、エンジンをかけた状態でも電圧の降下が確認できたと書いています。つまりアイドリングしていれば大丈夫、でもない。JAFのまとめは、一般的な車はバッテリーや発電機に余裕がないため、エンジンの始動・不始動にかかわらず、消費電力が大きめの家電は長時間使うことはできなかった、というものです。
ここから読み取れるのは、インバーターの定格出力はその機器がその電力を通せるという意味であって、車がその電力を出し続けられるという意味ではないということです。スマートフォンの充電やLEDライトのような小さな消費電力であれば話は別ですが、暖房や調理のような数百ワットの機器を前提に選ぶと、期待が外れます。
このテストは2018年の実施です。車載バッテリーの容量やインバーターの性能は年々変わるため、現在の製品にそのまま当てはまるとは限りません。
国の資料は、取り出し口を3つに分けている
もうひとつの一次資料が、国土交通省と経済産業省が2026年8月4日に公表した「災害時における電動車等から医療機器への給電活用マニュアル(改定版)」です。災害時に医療機器へ給電する場面を想定した資料ですが、車からの給電経路の整理そのものは、家電を使う場合にもそのまま読めます。
| 経路 | 取り出し口 | 最大出力 | 対応する車 |
|---|---|---|---|
| ①100V電源用コンセントから給電 | 車室内などの100V電源用コンセント | AC100V 0.1〜1.5kW | EV・PHEV・FCV・HEV(メーカーオプション等により100V電源用コンセントを持つ車) |
| ②外部給電器 | 充電端子(CHAdeMO=急速充電の規格名) | AC100/200V 1.5〜9kW(給電器による) | EV・PHEV・FCV(充電端子を持ち、放電の機能を備えた車) |
| ③固定型給電器 | 充電端子(CHAdeMO)から分電盤へ | AC100/200V 3〜9kW(給電器による) | ②と同じ。ただし設置・配線工事が必要 |
出典: 国土交通省・経済産業省「災害時における電動車等から医療機器への給電活用マニュアル(改定版)」(令和8年8月)。表は同資料の記載から当サイトが要約したものです。
そしてこの表には、見落としやすい注記が付いています。
図表中の充電端子には、シガーソケットやUSBポートは含まれません。
つまり、シガーソケットは②③の経路の入口ではありません。同じく車から電気を取る方法ではあっても、シガーソケット+インバーターは、この整理の枠外にある別の方法だということです。JAFのテストで一般的な車だけ結果が大きく違ったのも、性能の優劣というより系統の違いです。一般的な車は駆動用の大容量バッテリーを持たず、エンジン始動用のバッテリーから取るため、この3経路のどれにも当てはまりません。
自分の車がどれに当たるかは、日本自動車工業会が「各社の給電車紹介情報まとめ」として車種別の一覧を公開しています。この一覧も「クルマ本体から直接給電」と「クルマと給電器を接続して給電」で列が分かれており、同じ車種でもグレードやオプションで有無が変わることが分かります。買う前にまず見るべきはグッズのカタログではなく、この一覧と自分の車の取扱説明書です。
定格9,000Wでも、100Vのコンセント1口は1,500W
外部給電器を検討すると、3,000W・6,000W・9,000Wといった数字が並びます。マニュアルは給電試験で確認した5機種を挙げていますが、その仕様表を見ると、定格出力の隣にもうひとつ数字が並んでいます。
| 機種 | 定格出力 | コンセントの口数(電圧×数) |
|---|---|---|
| EVPS-L1(豊田自動織機) | 9,000W | AC100V×6口(1,500W×6口) |
| Power Mover(ニチコン) | 4,500W | AC100V×3口(1,500W×3口) |
| Power Mover Lite(ニチコン) | 3,000W | AC100V×2口(1,500W×2口) |
| POWER EXPORTER e: 6000(本田技研工業) | 6,000W | AC100V×4口(1,500W×4口)、AC200V×1口(6,000W×1口) |
| POWER EXPORTER 9000(本田技研工業) | 9,000W | AC100V×6口(1,500W×6口)、AC200V×1口(6,000W×1口) |
出典: 前掲マニュアル(改定版)の「対象とする外部給電器」。同資料には一部機種に新規受注終了・販売終了の注記があります。
定格が3倍違っても、AC100Vのコンセント1口から取れるのは、どれも1,500Wです。増えているのは口の数であって、1口あたりの上限ではありません。マニュアルも接続する機器について、1口あたりに接続する機器を合わせてAC100Vで1500W以内にするよう求めています。
これは、大出力の機種を選ぶ意味がないという話ではありません。同時に多くの機器へ配れるかどうかが変わります。ただ9,000Wの給電器を買えば1つのコンセントから9,000Wの機器が動く、というわけではない、という読み方の問題です。
1,500W以下でも動かないことがある
ここからがこの資料のいちばん重い部分です。マニュアルは医療機器の消費電力を、人工呼吸器100〜200W、酸素濃縮器は設定流量ごとに5L/分で150〜250W・7L/分で300W・10L/分で400W、吸引器100Wと示しています。どれも1,500Wよりはるかに小さい数字です。それでも、こう書かれています。
定格消費電力が1500W以下であっても、医療機器や電気製品によっては、電源を投入したときなどに一時的に大きな電流が流れることがあり、正常に作動しないおそれがあります。
機器の消費電力の表にも、一部の製品では起動時等に一時的に仕様の消費電力を大きく上回る場合がある、との注が付いています。機器によっては、壁になるのは平常時の消費電力ではなく、電源を入れた瞬間に流れる電流だということです。
そして、この注意書きの厳しさは経路によって違います。マニュアルは車室内の100V電源用コンセントから給電する場合について、設定流量が7L/分を超えるような高流量での酸素濃縮器の使用において稼働しない、もしくは運転が停止するおそれがある、と書きます。ところが外部給電器を介して給電する場合については、こうです。
特に、酸素濃縮器の使用においては、設定流量によらず、正常に稼働しない、もしくは運転が停止するおそれがあるため、事前に稼働可否を確認してください。
車室内のコンセントは0.1〜1.5kW、外部給電器は1.5〜9kW。酸素濃縮器については、出力の大きい外部給電器の側が「設定流量によらず」と、より広い条件で注意を促されていることになります。マニュアルは電動車のAC給電機能について、商用電源とは完全に同じではありません、と述べており、家庭のコンセントの代わりが完全に務まるわけではないという前提が繰り返し置かれています。
この節は在宅医療機器を対象としたマニュアルの記述です。医療機器を電動車から使う場合、同資料は医師・医療関係者・本人・本人の親族等と相談のうえ使用すること、外部バッテリーに給電できるならそちらを優先すること、バッグバルブマスクや手動式吸引器等を備えて対応できる体制を整えることを求めています。当サイトの記事は資料の紹介であり、医療上の判断の代わりにはなりません。
選ぶ前に確かめる4つ
- 自分の車にどの口があるか — 100V電源用コンセントがあるのか、CHAdeMOの充電端子から放電できるのか、シガーソケットしかないのか。ここで選べる道具が決まります。バッテリー直結でも800Wが9分だったので、それより細いシガーソケット経由は、暖房や調理を前提にしないほうが安全です。日本自動車工業会の給電車一覧と、自分の車の取扱説明書が出発点です
- 動かしたい機器の起動時を見る — カタログの消費電力は平常時の値です。定格に収まっているから動く、とは限りません。資料が名前を挙げているのは医療機器ですが、モーターやコンプレッサーを持つ家電も同じ挙動をすることがあります(この一般化は当サイトによるもので、資料が家電について述べているわけではありません)
- 1口あたりの上限で考える — 定格出力は同時に配れる合計の上限で、1口あたりの上限とは別の数字です。AC100Vの1つのコンセントに何をつなぐかは、1,500Wの枠で計算します。マニュアルはたこ足配線をしないこと、コードリールを使うならコードをすべて引き出すことも求めています
- 普段から蓄えておく — JAFのまとめは、EV・PHV・HVのいずれも災害発生前に蓄えた電気や燃料しだいだとして、日頃からバッテリーの充電や燃料の補充を心がけるよう呼びかけています。空のタンクからは何も出ません
車に積んでおく道具を選ぶという意味では、脱出用ハンマーやエアゲージ(タイヤ空気圧計)と同じ構図です。カタログの数字より先に、自分の車がどうなっているかを確かめるほうが早く答えが出ます。
まとめ
- JAFの実測では、一般的な車+インバーター(定格1,000W)は、新品バッテリーでも800Wの機器を9分で止めた。エンジンをかけていても電圧は降下した
- 電気自動車は1,250Wのポットを30回、ハイブリッド車はバッテリーだけでは1回。電動車という言葉では給電能力は分からない
- 国の資料は取り出し口を3経路に整理し、シガーソケットとUSBポートを充電端子から除いている
- 外部給電器は定格9,000WでもAC100Vのコンセントは1口1,500W。増えるのは口の数(AC200Vの口を持つ機種はそちらが6,000W)
- 1,500W以下でも起動時の電流で動かないことがある。ワット数は必要条件であって十分条件ではない
出典: JAF(日本自動車連盟)「JAFユーザーテスト」より「災害時におけるクルマからの電源供給」(2018年2月7日実施)。国土交通省報道発表「災害時に電動車は医療機器への非常用電源としても使えます」(令和8年8月4日)および国土交通省・経済産業省「災害時における電動車等から医療機器への給電活用マニュアル(改定版)」(令和8年8月)。車種別の給電機能は一般社団法人日本自動車工業会「各社の給電車紹介情報まとめ」(同ページに2026年4月15日時点の各社ホームページの情報を基に作成した旨の記載)。いずれも2026年8月19日に確認しました。給電機能の有無・仕様・製品ラインアップは変わることがあるため、実際の可否は自分の車の取扱説明書と各メーカーの案内でご確認ください。









