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RAV4 vs CR-V — 乗用車の骨格で作った四駆を、トヨタとホンダはどう説明したか

公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-08-23

クルマを知るのイメージイラスト

いま街で見かけるSUVのほとんどは、悪路を走るための頑丈な骨組みを持っていません。乗用車と同じ構造の車体に、少し高い着座位置と四輪駆動を組み合わせたものです。この作り方が普通になったのは1990年代の半ばで、日本では2台のクルマが相次いで登場しました。1994年5月のトヨタ「RAV4」と、1995年10月のホンダ「CR-V」です。

面白いのは、この2台がどちらも乗用車の骨格を使いながら、資料に書かれていることがかなり違うことです。両社の公式資料の言葉で並べてみます。

先に断っておきます。この記事が読み比べるのは、トヨタ側が発売から18年後にまとめた社史の解説文(約450字)と、ホンダ側が発表当日に出したニュースリリース(約4,600字)です。長さも、書かれた時期も、資料の性格も違います。どちらの会社が何を重視したかを同じ土俵で測ったものではなく、それぞれの文書が何を書いたかという話として読んでください。

先に結論です

  • トヨタの社史が書いているのは骨格と、運転したときの感覚。先行車が持っていたフレーム付きの車体と副変速機を持たない構成にした
  • ホンダのリリースが最も分量を割いたのは室内の使い方。フラットな床、席のあいだを前後に移動できる通路、テーブルになる荷室の床
  • ただしホンダのリリースは走破性も繰り返し書いている。逆に「オンロード走行重視」と自称しているのはトヨタ側のほう
  • トヨタは自社の社史でCR-Vを名指ししているが、ホンダの発売リリースにRAV4もトヨタも出てこない
  • そのホンダのリリースには、「SUV」という語も一度も出てこない。自車の呼び方は「乗用車感覚の四輪駆動車」

エスクードとロッキー — 先行した2台は、フレーム付きの車体に副変速機だった

RAV4を説明するとき、トヨタ自身が比較対象として挙げているのがスズキ「エスクード」(1988年)とダイハツ「ロッキー」(1990年)です。トヨタ自動車75年史の車両詳細情報には、こう書かれています。

1994年5月に発売したコンパクトサイズSUV。スズキ(株)が「エスクード」(1988年)、ダイハツ工業(株)が「ロッキー」(1990年)で先行していた“コンパクト4WD(四輪駆動)市場”に、一般乗用車に準じた基本設計の「RAV4」を採用した。

そして、先行した2台との違いをこう書き分けています。

「エスクード」と「ロッキー」がフレーム付ボデーに副変速機を備えた本格的クロスカントリー4WDであったのに対し、「RAV4」はフレームレス モノコックボデーに前輪駆動ベースのフルタイム4WDを採用したオンロード走行重視の新しいタイプの4WDで、一般の乗用車から乗り換えても違和感のない運転感覚と、高い着座位置による取り回しの容易さから、女性にも支持された。

ここで持たないことにしたものが2つあります。はしご状のフレームと、副変速機です。どちらも悪路のための装備で、当サイトのジムニーパジェロの記事で扱ってきた「本格的クロスカントリー4WD」の中身にあたります。RAV4はその両方を持たずに四輪駆動を名乗った、という位置づけになります。

1994年5月10日 RAV4 — トヨタが乗用車から持ち込んだのは運転の感覚だった

RAV4の発売日は1994年5月10日。同じ日に「RAV4 J」と「RAV4 L」の2つが出ています。車名の由来は同社の記載によれば「Recreational Active Vehicle 4 wheel drive」の略で、Jは「Joyful」から、Lは「Liberty」から名付けられました。JとLはボデーの形の違いではなく、どちらも同じ型式(SXA10G)です。違いは売る店で、同ページの販売会社欄はJがトヨタオート店、Lがトヨタカローラ店となっています。ホイールベースを210mm伸ばした4ドアが加わるのは、翌1995年4月のことでした。

この解説文で目を引くのは、悪路の走破性を示す数値がひとつも出てこないことです。代わりに、先行車との構造の違いを説明したあと、結びに置かれているのが「一般の乗用車から乗り換えても違和感のない運転感覚」と「高い着座位置による取り回しの容易さ」でした。どちらも、悪路をどれだけ走れるかの話ではありません。

1995年10月 CR-V — ホンダが持ち込んだのは室内の使い方だった

ホンダがCR-Vを発表したのは1995年10月9日、発売は10月12日です。リリースの表題は「乗用車感覚の新型2.0L四輪駆動車「CR-V」を発売」。本文はこう始まります。

本田技研工業(株)は、セダンの快適性やワゴンの使い勝手に加えて、悪路や不整地での走破性を合わせもつ新コンセプトの乗用車感覚の四輪駆動車「CR-V」を発表、10月12日より 全国のプリモ店とベルノ店から発売する。

開発の主要テーマは4つ挙げられています。「セダンのもつ爽快な走りや快適な乗り心地」を基本に、「ワゴン並のユーティリティ・スペース」「クロスカントリー4WD車の機動性」「機能と安心の新デザイン」。4つのうち、積むこと・使うことに正面から充てられているのが「ワゴン並のユーティリティ・スペース」です。

そして実際の分量では、この室内の節が最も大きくなっています。リリースの「商品内容」のうち、室内と装備を説明する節が約4割を占めます。

広いキャビンスペースは、リビング感覚でくつろげ、且つ空間の機能性を高めるために充分な室内高(1,245mm)、室内長(1,765mm)、室内幅(1,460mm)を確保した上で、このカテゴリーとしては、初のフルフラットフロアとセンターウォークスルーを可能にしている。

「このカテゴリーとしては、初の」はホンダ自身の記載です。ほかにも、上開きのガラスハッチと横開きのロアゲートに分かれた2WAYテールゲート、荷室の床下に設けた防水構造のカーゴフロアバケット、そして荷室の床板を外すと折りたたみ式のテーブルになる「テイクアウトテーブル」——同社はこのテーブルについて「テーブル角にはビニール袋などをかける溝切りを、中央部分にはパラソル設置用の穴を開けるなど、アウトドアで活用しやすいものとしている。」と書いています。荷室には「120W(12V-10A)まで使用できる便利なソケット」も付きました。車から電気を取り出す話そのものはクルマから何ワット取り出せるのかで扱っています。

寸法の決め方にも同じ方向が出ています。同社は「街中でも取り回しがよい適度なサイズとし、全高を低くすることで二段式駐車場が利用でき、キャリアへの荷物の積み降ろしも容易にした。」と説明しています。屋根の高さを、悪路ではなく駐車場で説明しているということです。外観の狙いは「街から山まで広い守備範囲をもち、タフで、軽快で、使いやすいというトレッキングシューズのような機能性を具現化。」でした。

ただし、ホンダは走破性も繰り返し書いている

ここまで読むと、CR-Vは室内の話ばかりのクルマに見えるかもしれません。実際にはそうではありません。同じリリースの中で、悪路の話は何度も出てきます。同社はサスペンションについて「オン/オフロードを問わず軽快でスムーズな走りを実現したCR-V専用4輪ダブルウィッシュボーン・サスペンションを採用。」と書き、4WDの節では「車両重量、タイヤ径、重心高などを考慮した専用チューニングによる、オフロードや登坂路における頼もしい走破性の実現」を挙げ、乗り味については「市街地ではセダンの軽快さと安定感を、不整地では突き上げ感が少なく、接地感のあるスムーズでフラットな走破性を実現。」としています。変速機にも「不整地走行も考慮した、知的4AT、プロスマテック(タイプII)を採用。」とあります。

ここで、先に引いたトヨタの解説文をもう一度見ると、逆向きの言葉が入っていることに気づきます。RAV4を「オンロード走行重視の新しいタイプの4WD」と書いているのは、トヨタ自身です。乗用車寄りに見えるRAV4の側がオンロード重視を自称し、室内の話が目立つCR-Vの側が悪路の走破性を繰り返し書いている——資料を読み比べると、そういう関係になっています。

2台について書かれていることを、両社の言葉のまま並べる

項目トヨタ RAV4(1994年5月)ホンダ CR-V(1995年10月)
自社での呼び方「コンパクトサイズSUV」
(トヨタ自動車75年史。なお同ページの「CUV」は、RAV4のヒットが呼んだ市場を指す語として出てくる)
「乗用車感覚の四輪駆動車」
(1995年10月9日リリース)
乗用車から持ち込んだと説明されているもの「一般乗用車に準じた基本設計」
「一般の乗用車から乗り換えても違和感のない運転感覚」
「ホンダの乗用車づくりの技術」
「ホンダが乗用車で培ってきた4輪ダブルウィッシュボーン・サスペンション」
車体「フレームレス モノコックボデー」【高剛性モノコックボディ】と見出しを立て、「新設計の高剛性フレームをベースにクロスメンバーで効果的に結合するなど」と説明
(ここでの「フレーム」は、先行車のはしご状フレームとは別の意味で使われている)
駆動「前輪駆動ベースのフルタイム4WD」「新設計の軽量デュアルポンプシステム採用のリアルタイム4WD」
室内について書かれた内容「高い着座位置による取り回しの容易さ」(室内についての記述はこの一点)フルフラットフロア、センターウォークスルー、2WAYテールゲート、テイクアウトテーブル、120Wソケットなど多数

※この表は、各社が公表した上記2つの資料の記述を当サイトが並べたものです。同じ項目を同じ基準で測った比較ではありません。トヨタ側は発売から18年後の社史(約450字)、ホンダ側は発表当日のニュースリリース(約4,600字)で、資料の種類も長さも書かれた時期も異なります。前者に室内の記述が少ないことは、トヨタが室内を軽視した証拠にはなりません。

並べてみると、2社は同じ語を使っていないことが分かります。トヨタは「一般乗用車に準じた基本設計」と書き、ホンダは「乗用車感覚」と書く。似た方向を向いていても、言葉はそろっていません。

名指ししているのは片方だけ

もうひとつ、資料を突き合わせると出てくる非対称があります。トヨタは自社の社史で、CR-Vを名指ししているのです。以下は同社が自社製品について書いた記述です。

「RAV4」のヒットにより、「(ホンダ)CR‐V」や「(三菱)パジェロ イオ」、「(ランドローバー)フリーランダー」を投入されるなど、CUVのブームが巻き起こった。

いっぽう、CR-Vの発売リリースを本文全体で検索してみると、「RAV」も「トヨタ」も一度も出てきません。ホンダが自車に与えている位置づけは、他社との比較ではなく自社の商品群の中の順番でした。見出しの直下に「(ホンダ・クリエイティブ・ムーバー第2弾)」とあり、注記でこう説明されています。

※クリエイティブ・ムーバー:使う人の生活をより楽しく、豊かに広げていける「生活創造車」をめざしたホンダの新発想のクルマ。

なお、この「第2弾」に対する第1弾が何かは、このリリースには書かれていません。CR-Vの1年前、1994年10月に発売されたオデッセイのリリースを読んでも、クリエイティブ・ムーバーという言葉自体が出てきません。ただしそのオデッセイのリリースには「乗用車感覚」「センターウォークスルー」「フラットフロア」という言葉がすでに並んでいます。ジャンルは違っても、ホンダが同じ言い方を1年前からしていたことは確かです。

そして、CR-Vのリリースには「SUV」という語が一度も出てきません。このリリースの中では、このクルマは新ジャンルの名前で呼ばれていない、ということです。ただし比較したトヨタ側の資料は2012年に公開された社史であって、1994年当時の発表資料ではありません。両社の当時の言い方をそろえて並べたものではないことは断っておきます。ちなみにトヨタは2代目RAV4のページで、CUVという新ジャンルを切り開いた場所をアメリカと書いています。

名前から「4WD」が外れた日

最後に、トヨタ自身が書いている一文を引きます。

1995年4月にホイールベースを210mm伸ばした4ドアモデルを、1997年9月に4WDを必要としない人のための2WD(2輪駆動)モデルも追加した。

RAV4という名前は、同社の記載によれば「Recreational Active Vehicle 4 wheel drive」の略です。その4番目の語にあたる四輪駆動を、1994年5月の発売から3年あまりのちに選ばなくてもよいものにしたことになります。先行車が積んでいた悪路のための装備を持たないところから始まったクルマが、駆動方式まで選択制にした——その経過が、メーカー自身の一行に残っています。

まとめ

  • RAV4(1994年5月10日)について、トヨタの社史は「フレームレス モノコックボデー」「前輪駆動ベースのフルタイム4WD」と書き、結びに「一般の乗用車から乗り換えても違和感のない運転感覚」を置いた。先行のエスクード・ロッキーは「フレーム付ボデーに副変速機を備えた本格的クロスカントリー4WD」だったと書き分けている
  • CR-V(1995年10月9日発表・12日発売)のリリースは、室内の使い方に最も分量を割いた。同社は「このカテゴリーとしては、初のフルフラットフロアとセンターウォークスルー」と記している
  • ただしそのリリースは走破性も繰り返し書いており、「オンロード走行重視」と自称したのはトヨタ側だった
  • トヨタは社史でCR-Vを名指しし、ホンダのリリースにはRAV4もトヨタも「SUV」も出てこない
  • RAV4は1997年9月に2WDを追加した。名前に四輪駆動と入ったクルマで、四輪駆動が選択肢になった

同じジャンルの2台を各社の一次資料で読み比べる記事は、ほかにもあります。軽トラックのキャリイとハイゼットが正反対の定義から出発した経緯はキャリイ vs ハイゼットの比較に、軽のオープン2シーターでダイハツが荷室を約束項目に立てホンダが発売リリースにその語を一度も書かなかった話はコペン vs S660の比較に、ミニバンで床下という同じ空間の使い道が分かれた話はステップワゴン vs ノア/ヴォクシーの比較にまとめています。

※本記事の出典と注記: RAV4に関する記述は、トヨタ自動車75年史の車両詳細情報ページ「RAV4 J」「RAV4 L」の記載によります。同ページには「代表するグレードのスペックを表示しております。」との注記が付いており、公開は発売から18年後です。「RAV4」のヒットがCUVのブームを呼んだという因果は、トヨタが自社製品について書いた記述です。RAV4に副変速機が無いことは同ページに明記されておらず、先行2台との書き分けから読み取れる内容です。CR-Vに関する記述は、本田技研工業のニュースリリース「乗用車感覚の新型2.0L四輪駆動車「CR-V」を発売」(1995年10月9日)によります。「このカテゴリーとしては、初の」はホンダの記載・主張です。オデッセイに関する記述は同社「新型車「オデッセイ」を発売」(1994年10月20日)によります。各リリースにおける語の出現回数(「RAV」「トヨタ」「SUV」)は、当該リリースの表題と本文を対象に本サイトが数えたもので、ホンダが当時これらの語を社内外で用いていなかったことを意味するものではありません。リリースの節ごとの分量の割合、および2社の記述を並べた表と整理は、上記資料の記載をもとに本サイトがまとめたものです。

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