中古車の選び方 — 修復歴・走行距離・保証の表示から状態を見極める

中古車は同じ車種・同じ年式でも、1台ごとに状態が違います。だからこそ「安い順に並べて上から選ぶ」と、購入後の修理費や追加費用で結局高くついた、ということが起こりえます。
この記事では、中古車の広告や店頭のプライスボードにルールとして必ず表示されている項目を手がかりに、車両の状態と価格を見極める方法を整理します。中古車の販売表示は「自動車業における表示に関する公正競争規約」(消費者庁および公正取引委員会が認定・承認した業界のルール)で定められており、読み方さえ分かれば、質問しなくても分かる情報がかなりあります。
購入時にかかる諸費用そのものの内訳は中古車購入時の諸費用で、初めて車を買うときの全体の流れは初めての車を買うときの流れで解説しています。
中古車の表示には「必ず書かれている項目」がある
販売店が中古車を店頭に展示するときや、インターネット・新聞・雑誌などの広告に販売価格を表示するときは、規約により販売価格や車名などに加えて次の項目を表示することになっています。裏を返せば、これらが読み取れない車は、その時点で確認が必要ということです。
| 表示項目 | そこから読み取れること |
|---|---|
| 販売価格(支払総額) | 車両価格に、購入に最低限必要な諸費用を加えた合計額 |
| 走行距離数 | 走行距離計の数値。交換・改ざん・疑義があればその旨も |
| 自家用/営業用/レンタカー/その他の別 | 前の使われ方。営業用やレンタカーは走行条件が厳しめ |
| 自動車検査証の有効期限 | 次の車検までの残り期間(年月まで表示) |
| 前使用者の点検整備記録簿の有無 | 前の所有者の整備履歴が車両に残っているか |
| 保証の有無 | 「保証付き」か「保証なし」か |
| 定期点検整備実施の有無 | 「定期点検整備付き」か「定期点検整備なし」か |
| 修復歴の有無 | 車体の骨格部位の修正・交換歴が「有」か「無」か |
インターネットや新聞・雑誌の広告の場合は、これに加えて塗色と車台番号(下3桁以上)の表示も必要です。同じ車が複数のサイトに掲載されているとき、車台番号の下3桁が一致すれば同一車両だと分かります。
修復歴 — 「事故車」と同じ意味ではない
中古車選びでもっとも誤解されやすいのが「修復歴」です。修復歴とは、車体の骨格に当たる部位を修正または交換して復元した履歴を指します。事故に遭った回数のことでも、ぶつけたことがあるかどうかでもありません。
骨格に当たる8つの部位
規約が骨格として挙げているのは、次の8部位です。
| 部位 | おおよその場所 |
|---|---|
| フレーム(サイドメンバー) | 車体の前後方向に通る主要な骨格 |
| クロスメンバー | 左右方向に渡って骨格をつなぐ部材 |
| フロントインサイドパネル | エンジンルーム内側の壁面 |
| ピラー(フロント・センター・リア) | ルーフを支える柱 |
| ダッシュパネル | エンジンルームと室内を仕切る壁 |
| ルーフパネル | 屋根 |
| フロアパネル | 床 |
| トランクフロアパネル | 荷室の床 |
この定義から、次の2つが導かれます。
- 大きくぶつけていても、バンパー・ドア・フェンダーなど外板の交換だけで直っていれば修復歴は「無」になる
- 逆に、衝突でなくても骨格部位の修正・交換が行われていれば「有」になる
「修復歴なし=無傷」ではない、というのが重要な点です。外板のキズやへこみの状態は、修復歴の表示とは別に自分の目で確認する必要があります。
判定の分かれ目は「カードサイズ」
骨格部位に損傷や修理跡があっても、小さなものは修復歴としません。この「小さい」の基準は2019年4月1日にカードサイズ(8.5cm×5.4cm)未満へ変更されました(それ以前は500円玉程度)。すべての骨格部位について、損傷等の大きさがカードサイズを超えた場合に修復歴と判定します。同じタイミングで、フロントクロスメンバーの定義も「左右サイドメンバーに直接溶接されているもの(間接接合は除く)」に変更されています。
この判断基準は、自動車公正取引協議会・日本自動車査定協会・日本オートオークション協議会の3団体で同一のものが使われています。販売店が違っても「修復歴あり」の意味は同じだと考えて構いません。
「修復歴あり」は避けるべきか
修復歴があること自体は、必ずしも「危険な車」を意味しません。ただし判断材料としては次の点を押さえておくと考えやすくなります。
- 価格が安い理由が明確になる — 同条件の修復歴なし車と比べて相場が下がるため、予算内で上のグレードや低走行の車に手が届くことがある
- 売るときも同じだけ下がる — 手放すときの査定でも修復歴は必ず申告事項になり、金額に反映される(車を高く売るための考え方)
- 部位と程度で意味がまったく違う — トランクフロアの軽微な修正と、フロントのサイドメンバー交換では、走行性能への影響も再修理のリスクも別物
規約では、修復歴がある車について「修復歴の部位については尋ねられたい旨」の表示で代えることが認められています。つまり部位は聞けば教えてもらえる前提のルールです。修復歴ありの車を検討するなら、どの部位がどう直っているかを必ず確認してください。
走行距離 — 数値そのものより「表示のされ方」を見る
走行距離数は、走行距離計に示されたキロ数を表示するのが原則です(広告では千キロメートル未満を四捨五入)。ただし、次の場合には追加の表示が義務づけられています。
| 状況 | 表示のされ方 |
|---|---|
| 走行距離計が取り替えられている | メーターのキロ数に加え、取替えの事実と、取替え前・取替え後のキロ数 |
| 走行距離数に疑義がある | メーターのキロ数と「?」の記号。推定できる根拠があれば推定キロ数(できなければ「不明」) |
| 走行距離計が改ざんされている | メーターのキロ数と、改ざんされている旨 |
広告では「部位・詳細については尋ねられたい旨」の付記に代えられる場合がありますが、店頭では書面での表示と購入者への交付が求められます。「?」や「不明」の記号を見かけたら、それは表示漏れではなくルールどおりの表示だと理解したうえで、根拠を確認しましょう。
数値の読み方としては、走行距離だけを見るより年式とのバランスで考えるほうが実態に合います。中古車の相場では年間1万キロメートル前後が一つの目安として扱われることが多く、これを大きく下回る「低走行」の車が常に良いとは限りません。長期間ほとんど動かされていない車は、ゴム部品やバッテリー、ブレーキなどが距離のわりに劣化していることがあるためです。距離の多寡よりも、点検整備記録簿でどこをいつ整備してきたかが分かるほうが判断材料として強いといえます。
なお、前使用者の点検整備記録簿の有無が「有」と表示できるのは、店頭展示の時点から遡って2年以内に定期点検整備が行われ、記録簿が車両に備え付けられている場合です。「無」の場合、販売店は走行距離数を確認した書類を備え付けておくことになっています。点検整備の制度そのものは車検と法定点検(12か月点検)の違いで解説しています。
保証と定期点検整備 — 2つは別のもの
「保証付き」と「定期点検整備付き」は混同されがちですが、意味が違います。
保証の有無
「保証付き」と表示できるのは、保証に要する費用が車両価格に含まれていて、保証書が付いている場合です。「保証付き」と表示する場合は、次の事項を付記することになっています。
- 保証の内容
- 保証期間、または保証走行距離数
- 購入者に保証書の交付がある旨
保証書は、一定の条件のもとで一定期間内に発生した故障を主に無償修理する旨を記載した書面です。「保証付き」の4文字だけでは、何がどこまで直るのかは分かりません。対象部位(エンジン・ミッションのみか、電装品も含むか)、期間と距離のどちらが先に来たら終わりか、修理の窓口はどこか、を確認してください。
定期点検整備実施の有無
2023年10月1日の規約改正で、この項目の表示は「定期点検整備付き」「定期点検整備なし」の2択になりました。
- 定期点検整備付き — 販売店が車両引渡しまでに定期点検整備を実施して販売する場合。整備に要する費用は車両価格に含めて表示することになっており、購入者には点検整備記録簿等が交付されます
- 定期点検整備なし — 上記以外。要整備箇所がある場合は、その旨を表示することになっています
「定期点検整備なし」の車は、そのぶん価格が抑えられている代わりに、購入後の整備費用は自分持ちになります。要整備箇所の表示がある場合は、その修理見積もりを取ったうえで支払総額と合算して比較しましょう。
支払総額表示のルール(2023年10月〜)
2023年10月1日から、中古車の販売価格は「支払総額」で表示することが義務になりました。安い車両価格を掲げながら実際にはその価格で購入できない、といった不当な価格表示への対応として導入されたものです。
支払総額 = 車両価格 + 諸費用で、内訳として車両価格と諸費用の額をそれぞれ表示することになっています。
支払総額に含まれるもの・含まれないもの
| 区分 | 主な項目 |
|---|---|
| 支払総額に含まれる | 自賠責保険料(月割)、自動車重量税、自動車税(月割)、環境性能割、車庫証明・検査登録の証紙/印紙代、リサイクル預託金相当額、検査登録手続代行費用、車庫証明手続代行費用 |
| 支払総額に含まれない(人によって要否が異なる) | 任意保険料、希望ナンバー申請費用、未預託のリサイクル料金、下取車の諸手続代行費用・査定料、管轄外(県外)登録費用、指定場所への納車費用 |
| 諸費用として請求できない(車両価格に含めるべきもの) | 納車準備費用・通常仕上費用(洗車、車内清掃、ワックスがけ等)、納車点検費用・納車整備費用(オイルやバッテリー交換等の軽整備)、必ず付帯する保証や定期点検整備の費用、土日祝納車費用、販売手数料、オークション陸送費、広告掲載料 |
3つ目の区分は特に重要です。「納車準備費用」のような名目で別途請求されたら、それは規約違反にあたります。不当な価格表示に対しては初回から厳重警告、悪質な場合は違約金と事業者名の公表という措置が定められています。
また、「コミコミ価格」「ポッキリ価格」といった名称だけの表示は認められず、「支払総額」の名称を使うことが必要です(併記は可能)。メンテナンスパック等のオプション購入を販売の条件にすることもできません。
諸費用の各項目が何なのかは中古車購入時の諸費用、税額の仕組みは自動車重量税と自動車税の納付ガイド、強制保険については自賠責保険の仕組みで解説しています。希望ナンバーは支払総額に含まれない項目なので、付けたい場合は別途費用として見込んでください(希望ナンバーの取り方と費用)。
2026年4月からは環境性能割の分が消えている
環境性能割は2026年3月31日をもって廃止され、2026年4月1日以降の登録・届出には課されません。諸費用の内訳から1項目が消えていることになるため、それ以前に作られた見積もり例や解説記事の金額をそのまま当てはめないよう注意してください。2026年に変わった税・費用の全体像は2026年、車の税金と費用はこう変わったにまとめています。
現車確認と鑑定書の読み方
第三者機関の鑑定を受けた車には、車両状態を示すコンディションチェックシート(車両状態評価書)が付いていることがあります。表現は機関により異なりますが、キズやへこみの大きさ・個数を共通のものさしで表す点は同じです。たとえば自動車公正取引協議会の基準を満たした鑑定システムでは、次のように区分されます。
| 区分 | 目安 |
|---|---|
| 極小 | 500円玉程度未満 |
| 小 | カードサイズ程度未満 |
| 中 | A4サイズ程度未満 |
| 大 | A4サイズ以上 |
| 数個/複数 | 数個は5〜6個、複数は7個以上 |
あわせて外装・内装のグレード評価や、タイヤの残り溝(残山)なども記載されます。ただし鑑定は原則として停止状態で確認できる範囲の判定であり、走行チェックを伴うものではありません。また評価はあくまで鑑定日時点のもので、以降の品質を保証するものではない点も明記されています。鑑定書があっても、可能なら自分の目と試乗で確かめるのが確実です。
現車で見ておきたいのは次のあたりです。
- 車検証の記載と現車の一致 — 型式・車台番号・初度登録年月・所有者欄。所有者がローン会社になっていないかも確認する(車検証の見方)
- タイヤ4本の残り溝と製造年週 — 4本交換すると数万円かかるため、購入直後の出費に直結する(タイヤ交換の時期と費用)
- バッテリーとエンジンオイルの交換時期 — 記録簿で最後の交換を確認する(バッテリー上がり/エンジンオイル交換)
- 雨漏り・水没の痕跡 — 室内の異臭、シート下やスペアタイヤ格納部の泥・サビ(水没車と保険・手続き)
- 下回りのサビ — 降雪地域で使われた車は融雪剤の影響を受けていることがある
比べるときは「支払総額」ではなく「乗り出してからの総額」で
支払総額表示によって購入時点の比較はしやすくなりましたが、車を持つコストの大半は買った後にかかります。候補が絞れたら、次の項目を足して数年分で比べると判断がぶれません。
| 比較する項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 支払総額 | 内訳の車両価格と諸費用の額 |
| 次の車検までの期間 | 車検証の有効期限。残りが短ければ数か月後に車検費用が発生する |
| 購入直後に必要な整備 | 「定期点検整備なし」の要整備箇所、タイヤ・バッテリー等の消耗品 |
| 毎年の税金 | 排気量と初度登録年月(13年超の重課の有無) |
| 任意保険料 | 車種と等級による。見積もりを取ってから決める |
| 燃費と駐車場代 | 走行距離の見込みと地域相場 |
維持費全体の内訳は車の維持費は年間いくら?、軽自動車との比較は軽自動車と普通車の維持費の違いで扱っています。ローンを組む場合は自動車ローンの選び方と残価設定ローンの仕組みを、そもそも所有するかを迷っている場合はカーシェア・レンタカー・サブスクとマイカーの比較もあわせて検討材料にしてください。
中古車を見るときのチェックリスト
- 支払総額の内訳(車両価格と諸費用の額)が表示されているか
- 「納車準備費用」など、諸費用として請求できないはずの名目が入っていないか
- 修復歴の表示は「有」「無」どちらか。「有」なら部位はどこか
- 走行距離に「?」「不明」「改ざん」「メーター交換」の記載がないか
- 前使用者の点検整備記録簿は「有」か。整備の内容を読めるか
- 保証は「付き」か。付きなら内容・期間・保証走行距離数はどうなっているか
- 定期点検整備は「付き」か。「なし」なら要整備箇所の表示があるか
- 車検の残り期間はどれくらいか
- 自家用か、営業用・レンタカー上がりか
- タイヤ・バッテリー等、購入直後に交換が必要なものはないか
まとめ
- 中古車の表示項目は公正競争規約で決まっている。走行距離・車検期限・整備記録簿・保証・定期点検整備・修復歴は必ず表示されている
- 修復歴は骨格8部位の修正・交換歴のこと。事故の有無とは別で、判定の分かれ目は損傷がカードサイズ(8.5cm×5.4cm)を超えるかどうか
- 走行距離は「?」「不明」「改ざん」「メーター交換」の表示に注意。数値だけでなく年式と整備履歴とあわせて読む
- 「保証付き」と「定期点検整備付き」は別物。それぞれ内容・期間・実施の有無を確認する
- 2023年10月から支払総額表示が義務。納車準備費用などを諸費用として別途請求するのは規約違反にあたる
- 比較は支払総額だけでなく、車検の残り・購入直後の整備・毎年の税金と保険を足した数年分で行う
※本記事の表示ルールは、自動車公正取引協議会が公開する自動車公正競争規約および同施行規則、ならびに同協議会の資料に基づく2026年7月時点の一般的な内容です。規約は改正されることがあり、個々の車両の状態や販売条件は販売店ごとに異なります。実際の購入にあたっては、販売店が交付する書面と、自動車公正取引協議会の公式情報で最新の内容を確認してください。表示に疑問がある場合は同協議会の消費者相談室に相談できます。









