クルマディグDIG DEEPER INTO CARS

ホーム保険

台風・大雨から車を守る — 冠水への備えと水没したときの保険・手続き

公開: 2026-07-20 / 更新: 2026-08-05

保険のイメージイラスト

夏から秋にかけての台風・集中豪雨は、車にとって毎年の脅威です。冠水した道路に進入してエンジンが壊れたり、駐車中の車が水没して廃車になったりする被害は、実は事前の備えでかなり減らせます。この記事では、台風・大雨への備え、冠水・水没時の対処、そして車両保険の適用と手続きまでを順に解説します。

台風・大雨で車に起こる主な被害

  • 冠水・水没 — 冠水した道路への進入や、駐車場所の浸水。床面を超えて水に浸かると電気系・エンジンに深刻なダメージが及び、全損(修理不能、または修理費が車の時価を超える状態)になることも珍しくありません
  • 飛来物による損傷 — 強風で飛んできた物によるガラス割れ・ボディのへこみ
  • 高潮・塩害 — 海水を被った車は真水以上に腐食や電気系トラブルが進みやすく、全損扱いになりやすい被害です

事前の備え — 「どこに停めるか」がほぼすべて

ふだんの駐車場所をハザードマップで確認する

自宅や月極駐車場が浸水想定区域に入っていないかを、自治体のハザードマップや国土交通省の「重ねるハザードマップ」で一度確認しておきましょう。川沿い・低地・アンダーパス周辺は特に注意が必要です。

台風の接近が分かったら

  • 浸水リスクのある場所の車は、高台や立体駐車場の上層階へ一時移動する(数日分の駐車料金は、水没被害に比べればわずかです)
  • 地下駐車場や機械式駐車場の下段は最も危険です。過去の台風でも地下・下段の水没被害が繰り返し起きています
  • ボディカバーなど風で飛びそうな物は外すか固定し、可能なら建物側に寄せて飛来物を受けにくくする
  • 燃料は満タンに近づけておく(停電や給油所の閉鎖への備え)

そして大雨・暴風のピーク時にはそもそも運転しないのが最大の防御です。

運転中に冠水した道路に出会ったら

原則はただひとつ、「引き返す」です。

  • 見た目では水深が分かりません。床面に達する程度の水深でも走行不能になる危険があり、マフラーや吸気口から水を吸えばエンジンは停止します
  • アンダーパス(立体交差のくぐり抜け部分)は短時間で一気に水位が上がる、冠水事故の典型ポイントです。通行止めになっていなくても、水がたまり始めていたら進入しない
  • 走行中にエンジンが止まったら再始動を試みず、安全の確保と車から離れる判断を優先します(水位は思っているより速く上がります)

水没してしまったときのNG行動と脱出

エンジンを再始動しない

水に浸かった車でエンジンをかけ直すのは厳禁です。エンジン内部に水が入った状態で始動すると内部部品が壊れる(いわゆるウォーターハンマー)ほか、電気系のショートの原因にもなります。水が引いた後も同じで、浸水した車は自分で動かさず、ロードサービスや整備工場・販売店に連絡してください。浸水車両は時間がたってから電気系のショートで火災に至る例があり、国土交通省や消防が注意喚起しています。ハイブリッド車・電気自動車は高電圧部品があるため、むやみに触らないことも重要です。

車内からの脱出

  • 水位が上がるとドアは水圧で開かなくなります。電装が生きているうちに窓を開けるのが第一です
  • 窓が開かない場合は脱出用ハンマーでサイドガラスを割ります。フロントガラスは合わせガラスのため割れません。脱出用ハンマー(シートベルトカッター付き)を運転席から手の届く場所に備えておきましょう

水没は車両保険で補償される?

台風・洪水・高潮による水没・損傷は、車両保険を付けていれば補償されるのが通例です。補償範囲を絞ったエコノミー型でも、台風・竜巻・洪水といった損害は対象に含まれるのが一般的です(ただし地震・噴火・津波は一般型でも対象外です)(一般型とエコノミー型の違い)。

損害の原因一般型エコノミー型
台風・洪水・高潮(水没・飛来物)
地震・噴火・津波×(専用特約で一部備え可)×

押さえておきたいポイントは3つです。

  • 地震・噴火・津波が原因の損害は対象外が原則です(備えるには専用の特約が必要)。同じ「水」でも、台風の高潮は対象・地震の津波は対象外、という線引きです
  • 台風・洪水で車両保険を使った場合は1等級ダウン事故として扱われるのが通例で、3等級ダウンする事故より翌年以降への影響は小さめです(等級制度の仕組み)
  • 全損の場合は設定していた車両保険金額が支払われます。車両保険を付けていない場合、自然災害による自分の車の損害を補償する保険はないため、貯蓄で対応することになります

被害に遭ったら、まず保険会社(または代理店)に連絡し、指示に従いつつ車の状態の写真(水位が分かる引きの写真・車内・エンジンルーム)を残しておくと、その後の手続きがスムーズです。

全損になったら — 廃車・買い替えの手続き

  • 修理不能・修理費が見合わない場合は廃車(永久抹消登録)の手続きへ進みます。解体を経て申請すると、自動車重量税・自賠責保険の残期間分の還付を受けられる制度があります(廃車手続きの流れ)
  • 大規模な災害では、自治体が発行する罹災証明書・被災証明書が各種支援制度の利用に使われることがあります。車の被害も写真を残し、自治体の案内を確認しましょう
  • 災害後は市場に水没歴のある中古車が流通しやすくなります。買い替えで中古車を検討する場合は、冠水歴の告知や第三者機関の車両状態評価の有無を確認すると安心です

まとめ

台風・大雨対策は「ハザードマップで駐車場所を確認 → 接近時は高い場所へ移動 → ピーク時は運転しない」の3つでほとんど決まります。それでも被害に遭ったら、再始動せず保険会社とロードサービスへ連絡。水災は車両保険(エコノミー型含む)で補償されるのが通例で、等級への影響も1等級ダウンにとどまります。車両保険を付けるか迷っている人は車両保険は必要かの記事もあわせてどうぞ。

※補償範囲・特約・等級の扱いは保険会社や契約内容によって異なります。実際の適用は必ずご自身の契約の約款・重要事項説明書や保険会社への確認で判断してください。

あわせて読みたいガイド

保険

自動車保険の選び方 — 補償の優先順位と保険料が決まる仕組み

任意保険は何を付ければいい?補償の優先順位に加え、等級・型式別料率クラス・ASV割引といった保険料が決まる仕組みを、損害保険料率算出機構の公表資料から読み解きます。2026年6月に届け出られた参考純率の引き上げと、新設される運行特性区分も解説。

2026-08-03 更新

保険

自動車保険の等級制度とは — 事故で保険を使うと保険料はいくら上がる?

等級は保険料を決める料率区分の中で較差が最大(約5.62倍)。損害保険料率算出機構の公表資料から、ノンフリート等級の仕組み、3等級ダウンと1等級ダウンの違い、同じ等級に2つの保険料がある「事故有」区分、そして保険を使うか自腹かの判断材料になる支払統計まで読み解きます。

2026-08-03 更新

保険

車両保険は必要か — 一般型とエコノミー型の違いと、支払統計から見る判断の考え方

車両保険を付けるか外すかを、損害保険料率算出機構の公表統計から考えます。支払いの頻度と1件あたりの金額、事故形態別の内訳、エコノミー型の正体である2つの特約、車両価額協定保険特約と免責金額の仕組み、修理費が上がっている理由と2027年1月以降の参考純率改定まで整理します。

2026-08-05 更新

保険

自賠責保険とは — 補償内容・保険料・期間と切れたときの重い罰則

自賠責保険(強制保険)は任意保険と何が違う?自動車損害賠償保障法の条文・支払基準の告示・損害保険料率算出機構の統計をたどり、補償の中身と限度額、支払われる単価、どこで入っても同じ理由、2026年11月の13年ぶり改定、実際の支払データまで解説します。

2026-08-04 更新

保険

交通事故を起こした・もらったときの対応手順 — 現場での義務から警察・保険・示談まで

事故直後にやるべき4つの法律上の義務(停止・救護・危険防止・警察への報告)から、現場で記録すべき情報、保険会社への連絡、交通事故証明書の取り方、物損から人身への切替、もらい事故で自分の保険会社が示談交渉できない理由まで、時系列で解説します。

2026-07-23 更新

保険

自動車保険の中断証明書とは?等級を最長10年残す条件と手続き

車を手放す・海外赴任するとき、任意保険をただ解約すると長年育てた等級は消えてしまいます。中断証明書を取れば等級を最長10年保存でき、家族に引き継ぐことも可能。発行条件・申請期限・再開の手続きを解説します。

2026-07-24 更新

最近公開した記事

クルマを知る

パジェロとダカールラリー — 12回勝った競技車と、24年97万km走った市販車

三菱自動車のパジェロは、ダカールラリーで通算12回の総合優勝を挙げています。ただし1983年の初出場で勝ったのは市販車無改造クラスでした。三菱が公開している資料を年代順に読むと、勝ち続けるほど競技車は市販車から遠ざかり、1997年には「ダカールラリーのレギュレーション変更に対応する」市販車まで作っています。一方で、7大会連続優勝の最後となった2007年の大会で約7,000kmを走り切ったのは、まだ発売前だったデリカD:5のサポートカーでした。同社の特集記事には、1台で24年97万kmを走ったパジェロも登場します。39年で生産を終えたパジェロという名前が何を残したのかを、三菱が公開している原文と数字だけで追いかけます。

2026-08-07 更新

クルマを知る

「80点主義」は妥協ではなかった — カローラ60年、落第点をひとつも作らない設計思想

「80点主義」は長いあいだ、可もなく不可もないクルマの代名詞のように使われてきました。ところがトヨタ自動車75年史に残る初代カローラの主査・長谷川龍雄の発言を読むと、意味はほとんど逆です。ひとつでも50点の項目があれば大衆車として失格で、だからあらゆる面で80点以上を取る。そのうえで、どこか一点を80点より引き上げてセールス・ポイントにする。トヨタはこれを「80点主義+α」と呼んでいます。1961年のパブリカの誤算から、1966年のカローラ、そして2019年に生まれた現行モデルの日本専用ボディまで、トヨタが公開している資料の原文と数字だけで追いかけます。トヨタの記載では、カローラシリーズは2026年10月20日に誕生60周年を迎えます。

2026-08-07 更新

クルマを知る

触媒なしで排ガス規制を越えたエンジン — ホンダCVCCとマスキー法の物語

1970年、米国で成立したマスキー法は、有害排出ガスを10分の1にせよという内容でした。GM・フォード・クライスラーを筆頭に世界中の自動車メーカーが「この規制内容を達成するのは不可能である」と主張したと、ホンダの社史は記しています。そのなかでホンダは、排気管に浄化装置を付けるのではなく、燃焼そのものを作り替える道を選びました。副燃焼室で薄い混合気を燃やすCVCCエンジンです。1972年12月、米国EPAの計測室で1975年規制の合格第1号になったこのエンジンは、しかし10年あまりで主役の座を降ります。次の主役は触媒でした。ホンダとトヨタ、両社の社史とEPAの公表資料から、この10年あまりを読み解きます。

2026-08-05 更新

クルマを知る

55年、変えなかったのは4つだけ — スズキ ジムニーが守った構造と手放したもの

ジムニーは1970年の初代から、エンジンを空冷から水冷に、2サイクルから4サイクルに、排気量を360ccから660ccに変え、車体も規格改定のたびに大きくしてきました。それでもスズキが繰り返し「継承」と書く構成が4つあります。ラダーフレーム、FRレイアウト、副変速機付パートタイム4WD、リジッドアクスル式サスペンション。2025年に登場した史上初の5ドア「ジムニー ノマド」でも、この4つは変わっていません。ただし公表値を並べると、5枚目のドアの代償がひとつだけ数字に出ています。スズキが公開している車種史とニュースリリースから、55年ぶんの「変えた」と「変えなかった」を読み解きます。

2026-08-06 更新