運転免許の自主返納と運転経歴証明書 — 手続き・特典・返納前に考えたいこと

「そろそろ運転をやめようか」と考えたとき、免許は自主返納という形で自分の意思で手放すことができます。返納すると、身分証として使える運転経歴証明書の交付を受けられ、バス・タクシー割引などの特典の対象にもなります。この記事では、返納の手続きと運転経歴証明書の取り方、そして「返納する前に知っておきたいこと」を、本人とその家族の両方に向けて整理します。
自主返納とは — 正式には「申請による運転免許の取消し」
自主返納は、有効な運転免許を自分の申請で取り消してもらう手続きです。高齢ドライバー向けの制度と思われがちですが、年齢の条件はありません。「車を手放して運転の予定がなくなった」という理由でも申請できます。
- 対象 — 有効な運転免許を持っている人(マイナ免許証も対象。免許証とマイナ免許証の2枚持ちの人は両方を持参します)
- 対象外 — 免許停止中の人や、違反などで取消しの手続きが進んでいる人は申請できません
- 手数料 — 返納の手続き自体は無料です(後述の運転経歴証明書の交付には手数料がかかります)
ここで最も重要な注意点をひとつ。返納した免許は復活できません。「やっぱり運転したい」となった場合は、教習所からの取り直し(新規取得)になります。返納は不可逆の手続きなので、迷いがあるうちは後述の「返納以外の選択肢」も検討してください。
「更新せずに失効を待つ」との違い
更新をやめて失効させても運転はやめられますが、返納には次の利点があります。
- 返納日がはっきり決まり、「うっかり運転」のリスクを断てる(失効に気づかず運転すると無免許運転です)
- 自治体・事業者の特典の多くが「自主返納した人」を対象にしている
なお、運転経歴証明書は失効後5年以内であれば申請できる場合もありますが、条件が複雑になるため、運転をやめると決めたら返納で区切りを付けるのがすっきりします。
返納手続きの流れ
- 窓口へ行く — 運転免許センターまたは警察署が基本です(警察署で受け付けるかどうか・どの警察署が対応するかは都道府県により異なります)
- 持ち物 — 運転免許証(マイナ免許証・2枚持ちの人は両方)。印鑑や写真が必要かは都道府県の案内で確認してください
- 申請書を記入して提出 — その場で免許の取消しが行われます
申請は本人が行うのが原則です。入院中などやむを得ない事情がある場合の代理申請の可否・条件は都道府県警察によって異なるため、事前に電話で確認しておくと確実です。
運転経歴証明書 — 免許証の代わりになる身分証
運転経歴証明書は、免許を返納した人に交付される、免許証とほぼ同じ見た目のカードです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請できる人 | 自主返納から5年以内の人(失効から5年以内の人も対象になる場合あり) |
| 身分証としての効力 | 公的な本人確認書類として使える(有効期限なし)。ただし対応していない機関も一部あり |
| 手数料 | 1,150円前後(都道府県により異なる場合があります) |
| 申請場所 | 運転免許センター・警察署など(返納と同時に申請可能) |
実務上のポイントは「返納と同時に免許センターで申請する」のが一番楽ということです。センターでの同時申請なら写真の持参が不要で即日交付になる運用が多いのに対し、警察署での申請は写真が必要だったり、交付まで数週間かかったりする場合があります。
- マイナンバーカードに記録する方式もある — カード型の証明書の代わりに(または併せて)、マイナンバーカードに運転経歴情報を記録する「マイナ経歴証明書」を選べます。この記録の申請は代理人ではできません
- 取らなくてもよい — 身分証がマイナンバーカードで足りている人は、経歴証明書を取らない選択もあります。ただし後述の特典は経歴証明書の提示が条件のことが多いため、迷ったら返納と同時に取っておくのが無難です
- 住所変更・再交付 — 引っ越したときの記載変更や紛失時の再交付は、免許証と同じように警察で手続きできます
返納の特典 — 全47都道府県で何らかの支援がある
免許を返納した人への支援は、全47都道府県で自治体や事業者により行われています。内容は地域差が大きいものの、よくあるのは次のようなものです。
- バス・タクシーの運賃割引や、乗車券・ICカードの交付
- 商店・飲食店・美術館などの協賛店での割引(経歴証明書の提示が条件のことが多い)
- 市区町村独自のコミュニティバス・デマンド交通の優遇
特典の一覧は「(都道府県名) 免許返納 特典」で検索するか、警察・自治体の高齢者支援窓口で確認できます。返納後の移動手段とセットで調べておくと、返納後の生活のイメージが具体的になります。
原付だけ残したい — 「一部返納」もできる
「車の運転はやめるが、近所の移動に原付は使いたい」という場合、免許の一部だけを取り消す申請もできます(一部取消し)。たとえば普通免許を返納して原付や小型特殊だけを残す、といった形です。
- 残す免許に応じた新しい免許証の交付手数料がかかります(金額は都道府県の案内で確認してください)
- 免許を持ち続けることになるため、運転経歴証明書は交付されません。返納特典の対象からも外れるのが一般的です
- 取り消した部分を後から復活させることはできません
返納以外の選択肢 — 迷っているなら
「まだ運転が必要だが不安もある」という段階なら、返納の前に次の選択肢があります。
サポートカー限定免許
2022年5月から、申請により免許に「サポートカー限定」の条件を付けられるようになりました。衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い時の加速抑制装置を備えた対象車に限って運転を続ける、返納と継続の中間の選択肢です(対象車種や条件の詳細は警察庁・都道府県警察の案内で確認してください)。
70歳以上の更新制度で運転を続ける
運転を続ける場合、70歳以上は更新時に高齢者講習、75歳以上は認知機能検査(違反歴によっては運転技能検査)があります。この講習・検査が客観的に運転を見直す機会にもなります。詳しくは運転免許の更新手続きガイドを参照してください。
迷ったら相談ダイヤル「#8080」
運転を続けるかどうかの相談には、全国統一の安全運転相談ダイヤル「#8080(シャープハチマルハチマル)」があります。発信地の都道府県警察の相談窓口につながり、本人だけでなく家族からの相談も受け付けています。「家族に運転をやめてほしいが本人が納得しない」という悩みの相談先としても使えます。
返納後の車とお金の後始末
返納しても、車を持ったままでは自動車税や保険料はかかり続けます。車の側の手続きも忘れずに進めましょう。
- 車を売る — 動く車なら売却が基本です。高く売る方法と必要書類を参照
- 家族が引き継ぐ — 所有者を変えるなら名義変更を。任意保険は記名被保険者の変更などの手続きが必要です
- 処分する — 乗らない車を放置せず廃車手続き(永久抹消・一時抹消)へ。税金の還付を受けられる場合があります
- 任意保険は「中断証明書」を検討 — 解約時に中断証明書を取ると等級を最長10年保存でき、同居の家族の契約に活かせる場合もあります(中断証明書の条件と手続き)
まとめ
- 自主返納は年齢を問わず申請でき、手続き自体は無料。ただし返納した免許は復活しない(再開は取り直し)
- 運転経歴証明書は期限のない公的身分証。返納と同時に免許センターで申請するのが最も手間が少ない(手数料は1,150円前後・都道府県で確認)
- 特典は全47都道府県にあり、経歴証明書の提示が条件のことが多い。返納後の移動手段とセットで調べておく
- 原付だけ残す一部返納も可能だが、経歴証明書は交付されない
- 迷っているならサポカー限定免許や相談ダイヤル#8080という手前の選択肢がある。返納後は車の売却・名義変更・保険の中断証明書まで忘れずに
※手続きの受付窓口・必要書類・手数料・特典の内容は都道府県や自治体により異なり、制度も変更されることがあります。実際に手続きする際は、お住まいの都道府県警察と市区町村の公式案内で最新情報を確認してください。









