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全長4メートル級に3列目をつくる — シエンタとフリードが、それぞれ動かしたもの

公開: 2026-09-14 / 更新: 2026-09-14

クルマを知るのイメージイラスト

全幅1,695mm。いわゆる5ナンバー、道路運送車両法施行規則でいう小型自動車の幅は1.70メートル以下と決まっているので、この1,695mmは上限の5mm手前です。日本の街で使うコンパクトなミニバンは、だいたいこのあたりの幅で、そこへ3列のシートを入れることになります。

幅も長さも決まっているのに、そこへ座席をもう1列足す。どこかを動かさなければ成立しません。この記事では、同じ枠に3列目を入れた2台 — トヨタ シエンタ(2003年9月発売)とホンダ フリード(2008年5月発売) — について、両社が発売当日に出したニュースリリースを読み比べます。数字ではなく、何を動かしたと自分で書いているかのほうを見ます。

先に結論

  • 動かせない条件はそろっている。 全幅はどちらも1,695mm、最小回転半径はどちらも5.2m(シエンタは2WD車、フリードはFF車の値)。エンジンもどちらも1.5リッター
  • トヨタが紙面を割いたのは、座席の使い方だった。 サードシートはヘッドレストをつけたまま格納でき、左右独立式。そして4WD車ではスペアタイヤの代わりにパンク修理キットを標準装備してサードシートの乗員空間を確保したと書いている
  • ホンダが紙面を割いたのは、床の高さだった。 薄型燃料タンクの配置と床下構造で低くフラットなフロアをつくり、2列目のフロア高390mm(FF車)、スライドドアの開口600mmという数字を挙げている
  • 3列目の畳み方も違う。 シエンタは左右独立式、フリードは5:5分割の左右はね上げタイプ
  • 座席の選択肢の幅も違う。 シエンタは7人乗り、フリードは7人・8人・5人の3タイプ
  • 価格の起点も別々だった(参考)。 シエンタは消費税を含まない表記で137万円から、フリードの3列シートは税抜1,610,000円から。5年差があるので引き算はできない
  • ただし同じ土俵ではない。 発売は5年離れており、全長は115mm、ホイールベースは40mm違う

読む資料について

この記事が読むのは、トヨタ自動車「トヨタ、コンパクトミニバン・シエンタを新発売」(2003年9月29日)と、本田技研工業「新型コンパクトミニバン「フリード」を発売」(2008年5月29日)の2本です。どちらもその車を発売する日に、そのメーカー自身が出した文書という点でそろっています。

そろっていないところもあります。発売は5年離れています。寸法も同じではありません。そして記述の細かさも同じではなく、フリードのリリースのほうが、寸法や開口幅といった数字を本文中に多く並べています。そのため、片方の文書に書かれていないことを、そのメーカーがやっていないとは読みません。以下でリリースに記載がないと書いたところは、あくまでその文書に出てこないという意味です。

ついでに1つ補っておくと、車両寸法表まで含めれば、室内寸法を公開しているのはシエンタ側のほうです(室内長・室内幅・室内高の3つ。フリードのリリースにこの3つはありません)。資料の厚さは、どちらか一方が一方的に厚いわけではありません。

また以下の見出しでは「トヨタが」「ホンダが」と書きますが、これはこの2本のリリースの書き方の違いであって、メーカーの性格を決めつけるものではありません。

動かせなかったもの — 幅と、取り回し

まず、2台がそろえてきた数字から見ます。

項目シエンタ(2003年・2WD車)フリード(2008年・FF車)
全長4,100mm4,215mm
全幅1,695mm1,695mm
全高1,670mm1,715mm
ホイールベース2,700mm2,740mm
最小回転半径5.2m5.2m
エンジン1.5L(1NZ-FE・新開発)1.5L i-VTEC

数値は上記2本のニュースリリースの記載によります。シエンタは車両寸法表(2WD車)、フリードは本文中の記載です。フリードの全高はFF車の値で、リリースには「スカイルーフ装着車は1,720mm」の注記があります。両車は発売時期が5年離れており、諸元の測り方や当時の法規が同一である保証はないため、優劣の比較には使えません。なおシエンタのリリースは車両寸法表で室内長2,515mm・室内幅1,430mm・室内高1,310mmも公開していますが、フリードのリリースに対応する値がないため、この表には入れていません。

全幅はどちらも1,695mm。ただし規格が1,695mmを決めているわけではありません。上限は1.70メートルで、その5mm手前という同じ数字を、2社が別々に選んだことになります。目を引くのは最小回転半径が2台とも5.2mで一致していることのほうです。

ただし、その5.2mの出しかたは同じではありません。トヨタは5.2mという数字に説明を付けていません(この値が出てくるのは車両寸法表だけです)。運転のしやすさについては別の箇所で「短いオーバーハング、車両感覚のつかみやすいスタイル、操舵力を軽めに設定したステアリングなどにより、運転のしやすさに配慮」とまとめています。ホンダは1文の中で因果をつないでいて、「ゆとりある空間を生み出す2,740mmのロングホイールベースでありながら、メカニズムのコンパクト化などにより充分なタイヤ切れ角を確保し、最小回転半径5.2mの優れた取り回し性を実現。」と書きました。長さを空間の理由として挙げたうえで、同じ文の中で取り回しに着地させています。なお2台のホイールベースの40mm差は当サイトの引き算で、ホンダはシエンタと比べてはいません。

トヨタが動かしたもの — 3列目のために、積むものを降ろした

シエンタのリリースで、3列目に直接ひもづく記述は座席まわりに集まっています。

サードシートはヘッドレストをつけたままの格納が可能で、状況に応じたラゲージスペースの確保が可能

セカンドシートは5:5分割可倒式、サードシートは左右独立式のシート構造を採用。セカンドシート片側にチャイルドシートを取り付けたままでのサードシートへの乗降を可能とするなど、実用性が高く、多彩なシートアレンジが可能

チャイルドシートを付けたままでも3列目に乗り降りできる、という条件の立て方は、このクルマが誰を想定していたかをそのまま示しています。リリースは開発の想定を「「赤ちゃんを抱えるママ」の使い方を想定し、「片手でポン!」をキーワードに、ユニバーサルデザイン評価指標を活用して」と書いています。

そして、装備の項に1行だけ、性格の違う記述があります。

スペアタイヤの代わりにパンク修理キットを標準装備(4WD車)し、サードシートの乗員空間を確保

座席のアレンジは、使い方の工夫です。これは違います。積んでいたものを降ろして、その場所を人のために使ったという記述です。しかも4WD車に限った話です。なぜ4WD車だけなのか、リリースは理由を書いていません。同じリリースには「リヤサスペンションには、2WD車がトーコレクト機能付トーションビーム式、4WD車はダブルウィッシュボーン式を採用」という記載がありますが、関係があるとは書かれていないので、2つの事実として並べるにとどめます。

なお、パンク修理キットで対応できる範囲は車種ごとの取扱説明書によります。リリースはこの点に触れていないため、当サイトでも、降ろしたものが何だったかを確認する以上のことは書きません。

もう1つ、トヨタが空間の作り方にまったく触れていないわけでもありません。リリースは「コンパクトなサイズながら、高効率パッケージにより、大人7人がくつろげる室内空間」を確保したと書いています。ただし、その中身までは書かれていません。

ホンダが動かしたもの — 3列目のために、床を下げた

フリードのリリースは、3列目の話を床から始めます。コンセプトの説明に出てくるのは、座席ではなく技術の名前です。

フリードは、“フリーライフ・クリエイション”をコンセプトにHonda独自の低床・低重心技術を採用し、街中で取り回しの良いコンパクトなボディサイズながら、大人が3列すべてで快適に座れるゆとりの室内空間を実現。

その低さをどうつくったかも、1文で書かれています。

薄型燃料タンクの配置や床下構造の工夫により、低くフラットなフロアを実現。

燃料タンクの置き場所が動いた話は、ホンダが2001年の初代フィットで通った道でもあります(その経緯は後席の畳み方から始まって燃料タンクの置き場所が動いた話にまとめています)。ただし、このフリードのリリースに「センタータンクレイアウト」という語は出てきません。出てくるのは「低床・低重心技術」と、上の「薄型燃料タンクの配置」です。当サイトも、この記事ではその範囲で読みます。

ついでに言うと、スペアタイヤは、この2社で逆の扱いを受けています。トヨタはシエンタの4WD車でスペアタイヤを降ろして3列目の空間にしました。ホンダは初代フィットで、燃料タンクを動かす案の途中で一度は置き場所を失いかけたスペアタイヤを、リアサスペンションの構造を変えることで従来通りの位置に戻しています(こちらも上でリンクした記事の話です)。同じ部品が、片方では降ろす対象で、片方では取り返す対象でした。

床が下がると、数字は乗り降りのところに出ます。

低床設計により、2列目のフロア高が390mm※4(FF車)の低さを実現し、小さな子どもやお年寄りでも無理なく乗り降りできるワンステップ低床フラットフロアを採用。

狭い場所でも乗り降りしやすい600mm※4の大開口を確保したリア両側スライドドアを採用。

この2つに付く※4は、リリースの注記によればHonda測定値です。フロア高390mm、開口600mm。床と開口の数字は、座ったあとではなく、そこへ行くまでの数字です。7人乗り仕様では2列目にキャプテンシートを採用して、「シートの操作をすることなく、どのドアからでもすべての座席に移動できるフリーウォークスルー」も挙げています。

いっぽう、シエンタのリリースには「低床」「フロア」「床」のいずれの語も出てきません(当サイトで全文を検索し、3語とも0件でした)。床を下げていないという意味ではなく、床の高さを売りとして書いていないということです。

ただし、シエンタが座る位置の数字を出していないわけではありません。車両寸法表にはフロントシートヒップポイント地上高640mmとフロント〜サードシートヒップポイント間距離1,605mmが載っています。

そしてホンダも、座面の高さに触れています。上で引いた床の1文の、すぐ次の項です。

後列に行くにしたがって高くなる開放感あるヒップポイント設計。

つまり両社ともヒップポイントを書いているのですが、測っている軸が違います。トヨタは地上高という絶対値と席の間隔、ホンダは前後の並び(後ろへ行くほど高くする)です。

同じ「3列目」でも、畳み方が違う

3列目の畳み方は、そのまま荷室の使い方になります。ここも2台で違います。

  • シエンタ: サードシートは左右独立式。ヘッドレストをつけたまま格納できる
  • フリード: 「簡単操作で荷室が広がる、5:5分割の左右はね上げタイプの3列目シートを採用。」

座席の選択肢そのものの幅も違います。シエンタは7人乗りで、リリースのテーマも「小粋でユースフルな7人乗り」でした。フリードは3タイプで、リリースは「クラス※1初の2列目キャプテンシートを採用した7人乗り仕様」、2列目に6:4分割のベンチシートを置いた8人乗り(「1.5Lクラス唯一の8人乗り」)、荷室を広く使う5人乗りを並べています(※1はリリースの注記で「コンパクトミニバンクラス(排気量1.5L)」と定義されています)。

スライドドアの電動化も、書かれ方が違います。シエンタは「スマートドアロック、パワースライドドア(助手席側)、スライドドアイージークローザーを設定し、操作手順や操作に必要な力の低減にきめ細かく配慮」。電動になるのは助手席側です。フリードは「荷物を抱えていてもラクに開閉できるパワースライドドアもタイプ別設定。」と書いています。どちらのリリースも、電動が標準か選択かをグレードごとには書き切っていないので、個別の装備は当時のカタログでしか確定できません。

価格の書き方も、そろっていない

参考として、発売時の価格の書き方も見ておきます。シエンタは消費税を含まない表記で「137万円からのお求めやすい価格を設定」(3列7人乗りの2WD・Eパッケージが1,370千円)。フリードは税込と税抜の両方を載せていて、3列シートのGは1,690,500円(税抜1,610,000円)からです。

この2つを引き算してはいけません。発売が5年離れており、装備も仕様も同じではありません。ここで言えるのは、同じ5ナンバー枠の3列シートでも、価格の起点はそれぞれ別に決められていたということだけです。

この記事が扱っていないこと

  • どちらが優れているか。 発売が5年違い、寸法も装備も違います。同じ土俵での比較にはなりません
  • 現行モデルの話。 ここで読んだのは初代シエンタ(2003年)と初代フリード(2008年)の発売時のリリースです。その後の世代の設計は扱っていません
  • 実際の室内の広さの体感。 当サイトは両車を所有・試乗していません。書いたのはリリースに載っている数字と表現だけです
  • グレードごとの装備。 電動スライドドアやシートの設定はグレードで変わります。リリースの記載だけでは確定できません
  • スペアタイヤとパンク修理キットの優劣。 使用条件は車種ごとの取扱説明書によります
  • 販売台数や評価。 この記事では扱っていません

まとめ

  • 全幅1,695mm、最小回転半径5.2m(シエンタは2WD車、フリードはFF車の値)、1.5リッターエンジン — 2台がそろえた条件は同じだった
  • トヨタ シエンタは座席の使い方に紙面を割き、4WD車では「スペアタイヤの代わりにパンク修理キットを標準装備(4WD車)し、サードシートの乗員空間を確保」と書いた
  • ホンダ フリードは床に紙面を割き、「薄型燃料タンクの配置や床下構造の工夫により、低くフラットなフロアを実現。」として2列目フロア高390mm(FF車)・開口600mmを挙げた
  • 3列目の畳み方は、左右独立式(シエンタ)と5:5分割の左右はね上げ(フリード)
  • 座席の選択肢は、7人乗りのみ(シエンタ)と7人・8人・5人の3タイプ(フリード)
  • 価格の起点もそれぞれ別に決められていた(シエンタは消費税を含まない表記で137万円から、フリードの3列シートは税抜1,610,000円から)。5年差があるので引き算はできない
  • 発売は5年、全長は115mm違う。優劣ではなく、同じ枠に対する答えの違いとして読める

ミニバンの成り立ちをもう少し広く見たい方は、5ナンバーを超えるサイズで3列目を扱ったステップ ワゴンとノア/ヴォクシーの読み解きもあわせてどうぞ。高さの使い方という切り口では、スーパーハイト軽の物語が同じ問題を軽自動車の枠で扱っています。

出典: トヨタ自動車株式会社「トヨタ、コンパクトミニバン・シエンタを新発売」(2003年9月29日)、本田技研工業株式会社「新型コンパクトミニバン「フリード」を発売」(2008年5月29日)。数値・引用はすべて同2本のニュースリリースの記載によります。あわせて小型自動車の寸法規格は道路運送車両法施行規則(昭和二十六年運輸省令第七十四号)別表第一を法令検索(e-Gov)で確認しました(2026年6月4日施行の版・長さ四・七〇メートル以下、幅一・七〇メートル以下)。2026年9月14日に確認しています。2社の記述を並べた表と、「動かしたもの」という整理は当サイトによるものです。発売時点の情報であり、現在販売されている車種の仕様とは異なります。

※広告を含みます

3列目の乗り降りは、寸法表の数字より実際に乗ってみたときに差が出ます。当サイトはその体感を扱えませんが、入会金・月会費が0円のカーシェア「EARTHCAR」なら、生活圏にどんな車種があるかを先に確認できます(6時間1,000円〜、10kmまでは距離料金なし。金額は目安で、車種や時期、ステーションによって変わります。特定の車種が借りられることを保証するものではありません)。

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