クルマディグDIG DEEPER INTO CARS

ホーム › クルマを知る

ガソリンは上げ、ディーゼルは下げた — マツダ SKYACTIV、2012年の圧縮比をめぐる逆向きの答え

公開: 2026-09-08 / 更新: 2026-09-08

クルマを知るのイメージイラスト

エンジンの圧縮比は、上げれば熱効率が良くなります。これは理屈のうえでははっきりしています。ではなぜ、ディーゼルエンジンだけは圧縮比を下げる方向に進んだのでしょうか。

2012年、マツダは同じ年に2つの新型エンジンを出しました。ガソリンの SKYACTIV-G と、ディーゼルの SKYACTIV-D です。ガソリンは圧縮比を上げ、ディーゼルは下げました。そして、行き着いた数字はどちらも14です。

ただし、この2つの14は性質が違います。ガソリン側の論文は圧縮比14(日本/北米仕様は13)を目標として掲げたと書いていますが、ディーゼル側の論文に目標という言い方は出てきません。14.0は諸元表に載っている結果の値です。

今回読み解くのは、マツダ技報 No.30(2012)に載った2本の論文です。1本は CX-5 の SKYACTIV-G を扱ったもの、もう1本は SKYACTIV-D 2.2L を扱ったもの。同じ号に並んでいるので、両方の言い分を同じ場所で読むことができます。

先に結論

  • ガソリンが上げた理由:技報は「理論的に圧縮比を上げるとエンジンの熱効率は良くなる。」と書き、圧縮比14(日本/北米仕様は13)を目標に置きました。それを拒んでいた壁は、ノッキングとプリイグニッションという異常燃焼です
  • ディーゼルが下げた理由:ディーゼルは元から圧縮比が高く、そのせいで上死点付近で燃やす時間が足りず、窒素酸化物(NOx)とすすを同時には減らせませんでした。技報は SKYACTIV-D が採用したのは世界一の低圧縮比化だと書いています
  • 下げた見返り:圧縮比16.3→14.0、筒内最高燃焼圧力17.5→13.5MPa。部品にかかる荷重が下がったぶん軽く細くでき、エンジン全体の重量は前モデル比 約20%、機械抵抗は約26%低減。燃費は前モデル比 約20%向上しました。ただし重量の20%は圧縮比だけの効果ではなく、技報は軽量化にシリンダブロックのアルミ化と部品点数の削減を加えた合計として書いています
  • 代償:圧縮比を下げると寒冷地や高地で火が着きにくくなり、未燃成分も増えます。技報はその両方に対して個別の対策技術を挙げています。そして最高出力は136kWから129kWへ下がっています(最大トルクは400N・mから420N・mへ)

ここで大事なのは、上げたほうも下げたほうも行き先は同じだったということです。ディーゼル側の論文は内燃機関の効率改善を、排気損失・冷却損失・ポンプ損失・機械抵抗損失を減らすことだと定義し、その図(Fig.1 Vision for Evolution of Internal Combustion Engine)にはガソリンエンジンとディーゼルエンジンの両方が並べて描かれています。圧縮比を上げる矢印と下げる矢印が、どちらも理想へ向かう図です。圧縮比はその手段のひとつにすぎません。

ガソリン側 — 上げたいのに上げられなかった理由

SKYACTIV-G の論文は、まず理屈から入ります。

燃費改善のため,まず,熱効率改善に着目した。理論的に圧縮比を上げるとエンジンの熱効率は良くなる。

理由も同じ段落に書かれています。圧縮比が上がると膨張比も上がり、燃焼ガスがピストンを押す期間が長くなるので、燃焼のエネルギーがより多く運動エネルギーに変わる、という説明です。

それでも簡単には上げられませんでした。技報が挙げる障壁は2つです。

これまで高圧縮比化を拒んでいた障壁は,1) ノッキングによるトルク低下 2) プリイグニッション発生によるエンジン破損 など,異常燃焼に関わる課題であった。

どちらも、燃える前に燃えてしまう現象です。ガソリンエンジンは火花で点火する順番が決まっているのに、圧縮で温度と圧力が上がりすぎると、その順番を待たずに勝手に燃え始めてしまいます。

ただし、この論文が扱っているのはノッキングの側だけです。プリイグニッションについては、デミオの SKYACTIV-G 1.3 で織り込み済みでマツダ技報 No.29 で紹介しているため割愛する、と書かれています。

SKYACTIV-G 2.0 がノッキングに対してとった対策は、筒内の温度を下げることでした。そのために新たに専用の4-2-1排気系を開発し、他の気筒から来る排気の圧力波が邪魔をして残留ガスが出きらない状態(気筒干渉)を抑えています。あわせて排気抵抗も従来比20%以上下げています。

ここで面白いのは、同じ圧縮比14を、マツダ自身が別の手段でも成立させていることです。同じ論文によれば、先に出ていたデミオの SKYACTIV-G 1.3 は高負荷域のノッキング回避のために Cooled EGR システムを採用しており、2.0 はトランスミッションを含めた市場展開性・機種展開性を考慮して、デミオとは違う手段で高圧縮比化と出力向上の両立を達成する必要があった、と書かれています。同じ数字へ向かう道が、排気管の形とEGRに分かれたわけです。

なお、圧縮比を上げたこと自体の取り分は、論文のロードマップでは半分以下です。2,000rpm のトルクをベース比15%向上させる計画のうち、直噴効果を含む燃焼改善効果が7%、排気系改善効果が8%と書かれています。

ディーゼル側 — 高いことが、そのまま制約になっていた

ディーゼルは火花を使いません。空気を強く圧縮して高温にし、そこへ軽油を噴いて自然に着火させます。だから圧縮比は元から高く、SKYACTIV-D の前モデルは16.3でした。

ところが技報は、その高さが行き詰まりを生んでいたと書きます。

上死点付近で燃やそうとすると混合気の均質化のための時間が稼げないうちに燃焼するためNOx と煤の同時低減には限界がある。

ピストンがいちばん上に来た瞬間(上死点)の近くで燃やせれば、そのあとピストンを押し下げる距離を長く使えるので効率が良くなります。ところが圧縮比が高いと、噴いた軽油が空気と混ざりきる前に着火してしまう。混ざりきっていない場所では、燃料が濃すぎてすすが出たり、温度が高すぎて NOx が出たりします。

そこで従来は、燃やすタイミングを上死点より遅らせる(リタードさせる)ことで排出ガスをきれいにしていました。技報はその代償をこう書いています。

排気ガスのクリーン化の要望に応えるためにはリタード燃焼を強いられてFig.2 のように有効膨張比が低下し,効率低下を招いていた。

もうひとつ、高圧縮比には別の代償もありました。出力を上げようとすると筒内最高燃焼圧力(Pmax)が高くなり、その圧力に耐えるために部品を強くしなければならない。技報は前モデルのディーゼルについて、ガソリンエンジンと比べて機械抵抗の総量が約1.5倍高いと書いています。しかもその内訳の約半分がピストンとクランクまわりです。

この2つを解く鍵として選ばれたのが、圧縮比を下げることでした。技報の言い方はこうです。

このDE が抱える制約を解決するためにSKYACTIV-D が採用したイネーブラは世界一の低圧縮比化であり,以下の技術コンセプトをサポートする。

続けて挙げられている狙いは2つ。上死点で燃やしても NOx とすすが出ないように燃料と空気が混ざる時間を確保すること。そして同じ出力のまま Pmax を下げ、軽い構造にして機械抵抗を減らすことです。

下げた結果、部品が細く軽くなった

圧縮比16.3→14.0にともなって、Pmax は17.5MPaから13.5MPaへ下がりました。技報はピストンとクランク系の荷重低減を、この Pmax 低減とクランク軸オフセットの採用の2つによるものとして書いています。荷重が下がれば、それを受け止める部品を大きく強くしておく必要も減ります。技報が挙げている数字を並べると、変化が起きた場所がはっきりします。

  • ピストン:重量を前モデル比 約26%低減、機械抵抗を約28%低減
  • クランクシャフト:細軸化により機械抵抗を前モデル比 約40%低減(主軸受・ピン径はφ60/φ51からφ52/φ52へ。細くなったのは主軸受側で、ピン側は51から52へわずかに増えています)
  • ピストンリング:機械抵抗を25%低減しつつオイル消費性能を前モデル比 約20%向上(こちらは荷重ではなく、シリンダブロックのアルミオープンデッキ化によるボア真円度の向上とリング形状によるもの)
  • オイルポンプ:油圧フィードバックと2段油圧切り換えにより機械抵抗を前モデル比 約22%低減
  • 補機駆動系:ベルト幅と張力の低減により、ウォーターポンプを含めて前モデル比 約40%低減
  • エンジン全体:重量 約20%低減(軽量化に加えてシリンダブロックのアルミ化と部品点数の削減を含む合計)、機械抵抗 約26%低減

そして技報は、この結果を従来のガソリンエンジン並みの機械抵抗レベルを達成したと表現しています。ディーゼルの弱点として指摘されていた1.5倍の差を、圧縮比を下げることで詰めたわけです。

排出ガス側の結果も同じ論文に書かれています。

後処理システムは前モデル同様に酸化触媒とDPFの組み合わせで,NOx後処理システムを採用せずに国内ポスト新長期&Euro6 規制に適合している。

ディーゼルの排出ガス対策というと、尿素水を使う装置や NOx をためて還元する触媒が思い浮かびますが、SKYACTIV-D はそれを積まずに規制に適合したという説明です。さらに、すすを捕まえる DPF についても世界最小レベルの容量とし、貴金属の担持量を前モデル比 約70%削減したと書かれています。

代償は、どちらの側にも出ている

ここが、この2本の論文のいちばん誠実なところだと思います。どちらも、自分たちが選んだ手段の困った点を自分で書いています。

まずガソリン側。4-2-1排気系は排気管が長くなるので、そのまま積むとキャタリスト(排ガス浄化装置)が前席の足元付近に来て足元スペースが狭くなり、重量物がエンジンから離れて付くことで不快な振動やこもり音の要因にもなる、と書かれています。さらに排気管が長いぶん、冷間始動時の排気ガス温度が下がり、触媒の浄化率が落ちるという課題も挙げられています。対策として、部品をエンジンルーム内に収めるループ型の排気系にし、始動直後は点火時期を大きく遅らせてキャタリスト前の排ガス温度を高め、触媒を早く暖める方法をとりました。

そしてディーゼル側。圧縮比を下げれば当然、圧縮したときの圧力と温度が下がります。技報はそれをはっきり書いています。

DE の圧縮比は年々低下傾向にあるが,低くなりすぎると高地極冷間のような環境下では必要十分な圧力・温度が確保できない。

この一文には2つの情報が入っています。ひとつは、ディーゼルの圧縮比を下げる流れはマツダだけのものではなく、業界全体の傾向としてすでにあったということ。もうひとつは、下げすぎると寒冷地や標高の高い場所でエンジンがかからなくなるということです。

SKYACTIV-D がこれに対して挙げている手当ては4つ。多噴孔ノズルとピエゾインジェクタを使って着火の直前に細かく燃料を噴くこと、2つのターボによる過給能力の向上、セラミックグロー、そして排気バルブを吸気行程でもう一度わずかに開いて排気ガスを筒内へ戻し、筒内温度を上げる仕組み(IDEVA)です。

代償はもうひとつあります。圧縮比を下げて多量の排気還流(EGR)を入れると NOx は減りますが、燃えきらなかった炭化水素や一酸化炭素は増えます。しかも燃費を良くすると排気の温度が下がるので、触媒が働き始めるまでの時間が長くなる。この2つに対して、後処理装置をエンジンから遠い床下からエンジンの近くへ移し、始動時には吸気を絞って最大8段の多段噴射を行う仕組み(D-AWS)を入れています。技報によれば、これでテールパイプの HC/CO を20〜40%低減できたとされています。

並べると、2本の論文は同じ問題に別々の答えを出しています。触媒が働き始めるまでの時間という同じ課題に、ガソリン側は点火時期の遅延で、ディーゼル側は吸気の絞りと多段噴射で応えている。上げた側と下げた側で、行き着いた困りごとが重なっているわけです(この読み比べは当サイトによる整理です)。

最高出力は、下がっている

諸元を並べると、意外な数字が出てきます。

項目前モデル(MZR-CD)SKYACTIV-D
圧縮比16.314.0
筒内最高燃焼圧力17.5MPa13.5MPa
最高出力136kW / 3,500rpm129kW / 4,500rpm
最大トルク400N・m / 2,000rpm420N・m / 2,000rpm
排気量2,184cm³2,188cm³
適合規制EURO5EURO6/国内ポスト新長期

数値はいずれもマツダ技報 No.30(2012)「SKYACTIV-D エンジンの紹介」の Table 1 によります。同じ表の同じ欄どうしの比較です。

最高出力は136kWから129kWへ下がっています。カタログの一番目立つ数字が下がったまま世に出たわけです。かわりに、最大トルクは400N・mから420N・mへ増え、技報は1,500rpm以下のトルクを20〜45%改善したと書いています。さらに、往復回転系が軽くなったことで使える回転域を5,200rpmまで広げたとも書かれています。

つまりこのエンジンは、最大値を大きくする方向ではなく、ふだん使う回転域を厚くする方向に振られています。圧縮比を下げるという選択が、そのまま性能の見せ方まで変えているように読めます(この読み方は当サイトによる整理です)。

この記事が扱っていないこと

  • 実車の使用感や燃費の実測。当サイトはこのエンジンを搭載した車両を所有しておらず、走らせた記録もありません。本記事は技報の記述のみを根拠にしています
  • 現行のマツダ製ディーゼルの仕様。参照したのは2012年の論文で、その後の改良は含みません
  • 他社のディーゼルとの比較。参照した2本の論文はいずれも他社の具体名を挙げていません
  • 世界一・世界最小といった表現の第三者による検証。いずれもマツダ技報での記述であり、当サイトが独自に確認したものではありません

まとめ

ガソリンは上げ、ディーゼルは下げる。逆方向に見える2つの選択は、同じ年に同じ会社から出ています。

ガソリン側が上げたのは、圧縮比が上がれば膨張比も上がって熱効率が良くなるからでした。壁になっていたのは異常燃焼で、それを筒内温度の低減で越えました。ディーゼル側が下げたのは、高い圧縮比のせいで上死点付近で燃やす時間が足りず、排出ガスのために燃焼を遅らせるしかなかったからでした。下げたことで燃やす場所を上死点へ戻せて、同時に部品も軽くできた。そして下げすぎたときの弱点には、着火のための技術を個別に当てています。

そして、下げた側のカタログの最高出力は136kWから129kWへ下がりました。かわりに最大トルクは420N・mへ増え、使える回転域は5,200rpmまで広がっています。技報自身はまとめで、ワイドレンジな高トルク化と機械抵抗26%低減、上死点付近での燃焼による燃焼効率改善、NOx後処理なしでの規制適合、20%の軽量化を成果として挙げています。

圧縮比という1つの数字だけを見て、高いほうが上等だとも、低いほうが新しいとも言えません。技報が並べている制御因子は圧縮比・比熱比・燃焼期間・燃焼時期・壁面熱伝達・吸排気行程圧力差・機械抵抗の7つで、圧縮比はそのうちの1つです。どちらへ動かすかは、そのエンジンがいまどこで損をしているかで決まります。

同じマツダが、このあとガソリンを圧縮着火させる方向へ進んだ話はマツダはなぜガソリンを圧縮着火させられたのか — 火花で作った火の玉を、第二のピストンにするに、圧縮比そのものを走行中に変える別解を選んだメーカーの話はなぜ日産はコンロッドを捨てたのか?VCターボ、圧縮比を自在にするまでの20年の物語にまとめています。

出典:マツダ技報 No.30(2012)「SKYACTIV-D エンジンの紹介」(P9〜13)および「CX-5 SKYACTIV-G のエンジン技術」(P3〜8)。いずれもマツダ株式会社の公開PDFを2026年9月8日に閲覧しました。引用はすべて原文どおりで、全角の読点や記号の表記も原文に従っています。圧縮比を上げた側と下げた側を並べて読むという構成と、最高出力の増減に注目する読み方は当サイトによる整理です。

あわせて読みたいガイド

クルマを知る

ハイブリッド車はなぜ燃費がいい?トヨタ式と日産式、しくみの違いまで読み解く

ハイブリッド車の燃費が良い理由を、エンジンの「苦手」から解説。トヨタTHSの動力分割、日産e-POWERのシリーズ方式など、方式ごとの設計思想の違いを読み解きます。

2026-07-30 更新

クルマを知る

軽自動車の規格はなぜ全長3.4m・660ccなのか?1949年から動いてきた「枠」の物語

全長3.40m・全幅1.48m・排気量660cc — 軽自動車の規格はどう決まってきたのか。数字を定めている省令の別表、1949年の制定から現行規格までの改定、そして64馬力自主規制の正体を解説します。

2026-09-01 更新

クルマを知る

なぜスバルは水平対向エンジンを積み続けるのか?60年続く「低重心」の設計思想

半世紀以上、量産乗用車で水平対向エンジンを作り続けてきたのはスバルとポルシェだけ。低重心・振動相殺という利点と、幅・コスト・整備性のトレードオフ、1966年スバル1000から60年続く設計思想を一次資料から読み解きます。

2026-09-01 更新

クルマを知る

なぜ日本車はCVTだらけで、欧州車は使わないのか?「変速をなくす」という設計思想

CVTとステップATは何が違うのか。プーリーとベルトの仕組み、オランダ生まれ日本育ちの歴史、トヨタ・ダイハツ・スバル三社三様の「ギヤの足し方」、段があることを気づかせないための制御まで、変速機の設計思想を一次資料から読み解きます。

2026-09-01 更新

クルマを知る

なぜマツダはロータリーエンジンを諦めなかったのか?「悪魔の爪痕」から発電用復活までの60年

世界中が挑んで撤退したロータリーエンジンを、なぜマツダだけが量産し続けられたのか。平均25歳・47人の開発部隊、「悪魔の爪痕」の克服、コスモスポーツ、ルマン総合優勝、RX-8での生産終了、そしてMX-30 Rotary-EVでの「発電用」復活まで、60年の物語を一次資料から読み解きます。

2026-07-30 更新

クルマを知る

なぜトヨタは「土台」から作り直したのか?TNGAに見る「プラットフォーム」の設計思想

新型車の紹介に必ず出てくる「プラットフォーム」とは何か。部品の共通化はコスト削減の話に見えて、トヨタのTNGAは「浮いた開発力を走りとデザインに再投資する」構造改革でした。2012年の公表から第1号車・4代目プリウス、熱効率40%のエンジンまで、トヨタの一次資料から読み解きます。

2026-07-30 更新

最近公開した記事

クルマを知る

作った側だけが書いた速度、売る側だけが書いた商標 — ムーヴとステラ、同じ改良の2本のニュースリリース

2026年7月29日にダイハツ工業が「ムーヴ キャンバス」「ムーヴ」の一部改良を発表し、その8日後の8月6日にSUBARUが「ステラ」改良モデルを発表しました。SUBARUは本文に「※ステラは、ダイハツ工業株式会社からのOEM供給です。」と書いています。2本を並べると、追加された検知対象(横断中の自転車・交差点の対向直進車・右左折時の横断歩行者)やACC・LKCの向上は両方に出てくる一方で、「対歩行者への最高速度条件が60km/h→80km/hに変更」はダイハツ側にだけあり、OEM供給であること・商標がダイハツ工業の登録商標であること・販売計画400台/月・ACCやメーターの対象グレードはSUBARU側にだけありました(価格は両社とも載せていますが、ダイハツ側は画像の価格表です)。一方に記載がないことはその装備がないことを意味しませんが、1台のクルマについて知りたいことが2本のリリースに分かれて載る、という読み方ができます。

2026-09-23 更新

カーグッズ

西日で見えなくなるのは前方の人だった — サンバイザーは5つを取り戻し、サングラスは眩しさを抑えても4体は✕のままだった

秋冬の夕方、正面から入る西日。JAF(日本自動車連盟)が日照装置で西日を再現し、前方に置いた7つの対象(マネキン4体・対向車2台・信号機)が運転席から確認できるかを測った実験があります。サンバイザーを使わない状態で○が付いたのは、ヘッドライトを点灯した対向車だけ。サンバイザーを使うと、○でなかった6つのうち5つが戻り、残った信号機が✕になりました。可視光線透過率15%・30%・75%の3種類のサングラスについて、JAFは眩惑を抑える一定の効果を認めていますが、表ではマネキン4体が12マスとも✕のままです。眩しさが減ることと、見えるようになることが別だった実験を読み解きます。

2026-09-22 更新

クルマを知る

冬の空調エネルギーの半分は、窓の曇りを取るために消えている — マツダが窓の内側に塗った膜と、試算で183kmから201kmへ

窓の曇りは快適さの問題に見えます。ところがマツダ技報 No.41(2025)の論文は、曇りを取る理由の先に「安全な運転を担保するために」を置き、そのうえで課題を「低エネルギーで快適な空調」と置きます。外の冷たい空気をヒーターで温めて乾いた風を送るのが現在の防曇手法で、窓の曇りを避けるための換気により冬場の空調エネルギーのおよそ半分が失われている、と。エンジン車はその熱を排熱から借りられましたが、電動車にはその副産物がありません。論文の試算(−10℃・90%RH・乗車2人・50km/h・30分ほか)では、暖房OFFの前提256kmが外気導入100%で173kmへ落ち、現状の内外気制御で183km、吸水性の防曇窓で201kmまで戻ります。防曇材料は3種類あり、親水性は暗所で効かず水膜が凍る、撥水性は大面積化が難しい——残ったのが吸水性でした。一次資料から読み解きます。

2026-09-21 更新

クルマを知る

1つの工場で1つの機種、が世界の常識だった — 後発のホンダが選んだ「治具を10分で替えるライン」

クルマを作る機械は誰が用意したのか。ホンダが公開している「本田技研工業 75年史」第Ⅲ章 第6節「生産技術」によれば、当時の世界の主要メーカーは1つの工場で1つの機種を作るのが通常でした。小型乗用車に後発で参入したホンダはそれを採らず、本体は全機種共用・治具部は機種専用に分けた総合溶接機を開発し、治具交換台車で10分程度の切り替えを実現します。ただし機械の単位で見ればこの分け方は車体が最初ではなく、1956年のHUM盤がエンジン部品で同じ課題を解いていました(ラインとしては機種ごとの専用が長く続いた、とも社史は書きます)。河島喜好の「何にでも使える機械などはつくってくれるな」が意味するのも、1機種専用ではなく市販の汎用機を買わないことです。そして2001年、電動ロボットは自社製をやめる判断まで。一次資料から読み解きます。

2026-09-20 更新